作品タイトル不明
529.ユリアンへの贈り物選び
ユリアンに何か買ってあげたい。相談を持ちかけたユリアーナは、真剣な顔で商品を睨む。呼ばれた商人は、揉み手をしながら饒舌に説明を続けた。その度に頷きながら、また新しい商品へ向き合う。
この調子では、終わるのが夕方になるかしらね。相談されたのが朝食後、今はお昼を過ぎたあたりだ。大急ぎで駆けつけた商人は、商談室にびっしりと小物を並べた。子供用だから手頃価格で、普段使えて持ち運べるもの。私が商人に伝えた条件よ。
「これはどう思う?」
ガラスの置き物? 綺麗だけれど……。
「ユリアンが持つのよ? 想像できないわ」
あの子が持ち歩く、そう考えると似合わない。ユリアーナも「そうよね」と机に戻した。ペンを見るけれど、筆まめでないユリアンにとっては無用の長物だわ。そうね……私なら、あの辺りを選ぶかも。
壁際の棚の上に並んでいる物を眺めた。私が立ち上がって移動したので、ユリアーナも付いてくる。
「この辺はどう?」
「高くない?」
値段を心配して、不安そうに尋ねてくる。お父様達にも相談して、皆で一つ贈ればいいと決まった。お父様、エルヴィン、ユリアーナの三人、シュミット伯爵家として贈るなら問題ない。領地もそこそこ貯蓄ができるようになってきた。
「問題ないわ」
事情を説明すれば、納得した様子で選び始めた。宝飾品と呼ばれる、宝石や貴金属の類よ。高額な商品もあるけれど、ピンからキリまで。幅広いのが宝飾品だった。
「カフスやピン留めなら、普段から使えるわね。あとは、そうね……このタイもお洒落だわ」
ピアノを弾くなら、指輪はダメ。ブローチの類か、いっそピアス? でもこの世界ではイヤリングだから、女性向けデザインが多い。耳に穴を開けるなんて言ったら、正気を疑われちゃうわ。ネクタイ代わりのクラバットを止めるピンはいいかも。
「これにする」
ユリアーナが選んだのは、髪留めだった。デザインはシンプルで、細いラインのような形だ。ヘアピンの形状が近い。細いけれど、黒曜石と白い貝細工で上品だった。材料が高価でないためか、お手頃価格ね。
「これでいいの?」
「ええ。ユリアンは髪を切らないと思うから……これがいいの」
双子ゆえの直感か、別の理由か。どちらでもいいわ。贈る方が納得して渡すなら、ユリアンは喜んで受け取るでしょう。それにクラバットをシャツに押さえる目的でも使えそう。
「わかったわ。これと……こっちも頂くわね」
ケンプフェルト公爵家として、ユリアンにプレゼントをする。カフスボタンを選んだ。ガラスのを持っているけれど、きちんとした宝石のカフスも必要になるはずよ。演奏会で着けてもらえたら、嬉しい。
綺麗な宝石箱に入れ、包装してリボンもつけたプレゼント。二つ用意して、微笑み合う。渡すのが楽しみだわ。