軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

527.夜ふかしがバレた子供みたいに

夜、寝室でレオンの黒髪を撫でながら絵本を読み聞かせる。うとうとする幼子を横たえ、隣に潜り込んだ。絵本の続きをせがんだレオンも、最後まで聞かずに夢の中。ぽんぽんと肩を叩いて、寝息が深くなるまで読み聞かせた。

「眠ったか?」

「ええ」

レオンを間に挟んで、ヘンリック様は問いかけてきた。

「弟子入りのこと、話すのが遅くなってすまない。初回で通ると思わなくて、な」

ヘンリック様は、数回のテストを経て合格すると思っていた。まさか一回目で、ユリアンが認められるなんて、想像もしなかったらしい。期限を切ったため、私は逆に考えていた。この一ヶ月でダメなら、プロは諦めなさいと。

おそらくユリアンも同じように考え、必死で技術を磨いたのね。

「怒っているか?」

「いいえ。ありがたいと思っているの。ただ……あの子が生まれてからずっと、一緒だったでしょう? 離れるのが想像できなくて」

結婚するときに一度覚悟したわ。家族に会えるのは特別な時だけになると。それでも実際に蓋を開けてみたら、ヘンリック様が不在だった。許可を得て離れに呼び寄せてからは、ほとんど毎日顔を合わせてきたの。

「突然会えなくなるのが寂しいわ」

「その点は不安だろうが、アウラーの屋敷自体は王都にある。ただ演奏旅行で他国へ行くことも多い」

やはり会える機会は減る。身元のしっかりした人に預けることは、安心材料だけれど。寂しさは別だった。

「レオンは懐いていたから、寂しがるでしょうね」

自分の寂しさを代弁するように、眠る黒髪の天使を引き合いに出す。私をじっと見つめ、ヘンリック様はほわりと微笑みを浮かべた。

「そこまで君に愛されるユリアンが、羨ましいな」

「家族愛よ?」

「それでも……俺が知らないアマーリアを知っている」

ああ、なんて不器用で愛おしい人なのかしらね。落ち込む私を引き上げようとする。手探りで愛情を拾い、貴重なそれを私に分けようとしていた。

「ありがとう、ヘンリック……私はあなたが大好きよ」

「っ……俺も愛している」

んんっ、下で声がして慌てる。ヘンリック様は仰向けにベッドに倒れ、眠ったフリをした。咄嗟の行動が、夜ふかしを親に見つかった幼子みたいで。肩を震わせて笑う。

声の主であるレオンは、別に起きたわけではなかった。寝返りを打つときに、声が出ちゃっただけ。黒髪を撫でて、私も横になる。

ヘンリック様はバツが悪いのか、私のほうを見なかった。

「おやすみなさい、ヘンリック様。また明日……」

返事をしようか迷うヘンリック様は、結局、何も言わない。私には、その沈黙が心地よく感じられた。言葉がなくても通じ合う夫婦になれたら、理想ね。