軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

526.途中で投げ出さないこと!

申し訳なさそうにヘンリック様が説明する。弟子入りなのだから、当然、師匠の家で暮らすらしい。朝から夜まで、音楽漬けの日々を過ごせる。

「弟子入りって……ユリアンは日常のこと、ほとんど出来ないのよ?」

心配になった。洗濯も料理も掃除も、ユリアンは及第点どころか失格レベルだわ。干した洗濯物の取り込みくらいはできるかも? 不安で尋ねたら、アウラー様の屋敷には使用人が揃っていた。音楽の弟子を取るのだから、日常的な生活は保障される。

「そんなに都合が良くて、いいのかしら」

「リア姉様は反対なの?」

「いいえ。ユリアンが選んだ道なら反対しないわ。でも、お父様やエルヴィン、ユリアーナには自分できちんと説明しなさい。もちろん、レオンにも……ね」

家族には自ら話す。レオンだって鍛錬が一緒にできなくなるし、普段顔を合わせなくなったら不安がるわ。ユリアンは大人びた顔で頷いた。

「きちんとやる」

「なら、私から注意するのは一つだけね。絶対に途中で投げ出さないこと。演奏家になれないかも、なんて考えてはダメよ」

願いの強さが幸運を引き寄せる。私はそう思っているの。言霊だって、前世の影響で信じているわ。だから、自分から可能性を切り捨てることはしないで。

「わかった……じゃなくて、わかりました。全力で頑張ります」

「それでも、どうしても無理な時は連絡しなさい」

人だから、無理なこともあるの。願うだけで全員がプロの演奏家になれる未来は、存在しない。とても残念だけれど、選ばれた一握りが栄光を掴む。

手が届かなかったからと、音信不通は嫌よ。きちんと釘を刺した。この子とエルヴィンは、泣き言を言えなさそうだもの。泣きついてきたら守る私を知っているから、意地を張ってしまいそう。

「しっかりした姉君だね。ユリアン、頑張れるかい?」

「はい」

男の子って、突然成長するわ。つい先日まで手を引いて歩いていた気がするのに、明日から私は要らないと離されてしまう。いつか、レオンもそうなるのかしら。

音楽を聞いている間に眠ったレオンは、膝に頭を置いて寝息を立てる。もし、そのいつかがあるなら……遅くきて頂戴ね。ユリアンみたいに早く自立されたら、私が倒れちゃうわ。

「安心してくれ、アマーリア。侯爵家を放り出して独立した男だが、音楽に関しては誠実だ。この点は保証する」

ヘンリック様のお墨付きで、一流演奏家の弟子入りが決まった。お父様やエルヴィンは反対しないでしょう。ユリアーナは少し心配ね。この場にいない双子の妹を思い浮かべた。