軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

517.双子は違う道を歩き始めた

オイゲンは三日間を過ごして、また帰っていった。実家へ戻るのに、泣きそうな顔をしないのよ。ユリアーナとデートの約束を取り付けるあたり、意外とやり手だったわ。それもティール侯爵家の庭デートよ。

ユリアーナには、お伺いする予定を教えるよう頼んでおいた。手土産を持たせる必要があるもの。きょとんとするユリアーナに尋ねる。

「お茶会の準備、オイゲンがするわけじゃないでしょう?」

「たぶん、使用人だと思うわ」

「その使用人に指示して、カップやテーブルクロスを選ぶのは誰?」

「あっ、そうね。侯爵夫人だわ」

正解よ。いずれ嫁ぐなら、あなたの仕事になるの。

二人の婚約はとんとん拍子に進んだ。お披露目は夜会が多いけれど、まだ若い二人なので午後の食事会となった。家族や親戚が顔合わせをして終わりよ。他家へは通知を出すだけ。

招待状をもらったのは今朝で、すぐに予定を確認してヘンリック様の休暇を申請してもらった。本来なら義兄は参加しなくていいけれど、ハンナ様からお誘いがあったの。ティール侯爵家の家計を預かる人からの誘いでは、断れないわね。

レオンの件があって知り合ったけれど、この頃は仕事面でもヘンリック様と侯爵様は付き合いがあるらしい。文官同士、あちこちで協力したり敵対したりするんですって。敵対と言っても、意見の相違ね。

「指が攣った、少し休む」

レオンを膝に座らせて積み木をしていた。絨毯の部屋に転がり込んできたのは、ユリアンよ。ここしばらく、全ての予定をピアノ中心に組んでいた。プロの演奏者や作曲家など、教師は六人もいる。早々に根を上げるかと思ったけれど、頑張っていた。

ヘンリック様のお知り合いに紹介してもらい、プロの弟子になるんだと気合十分だ。演奏家なのかしら。まだ何もわからないけれど、ユリアンの希望が叶うといいわね。

「ゆん、ちかれた?」

「ああ、レオンか。疲れたけど、また練習するぞ」

絨毯の上に仰向けに転がり、両手を上に掲げている。両手を握ったり解いたりする姿に、レオンはもそもそと隣に寝転んだ。見様見真似で真似をする。可愛いわ! ユリアンも可愛いけれど、系統の違う可愛さね。

「リア姉様。あのさ……俺、プロの演奏家を目指したい。それってエル兄の邪魔になるかな」

理由を聞けば、なるほどと思った。同時に、無用な心配ねと笑い飛ばせる。大人には簡単なことも、子供にとっては難しい話だった。領地経営の手伝いをしないのはまずい気がする。さらに演奏家の地位は高くないから、何かあっても兄を助けられない。貴族と結婚した方が、手助けになるのではないか。

「エルヴィンをみくびってはダメよ」

懸念を一蹴した。

「あの子は自分の力で立てるし、倒れそうなら私が支える。だから、あなたは好きなことをしなさい。いいわね? ユリアン」

「ん……ありがと」

ぶっきらぼうな口調で軽い言い方だけれど、ユリアンは照れて赤くなっていた。疲れたと言いながら転がって背を向けてしまう。

大丈夫よ、失敗したって構わない。全力で挑んで、高い壁を乗り越えたらいいわ。