軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

505.贈ったことない、かも?

届いた贈り物が積み重なっていく。懐妊が知れた時もそうだけれど、貴族のお付き合いって大変よね。そこで私は、他家に贈った覚えがないと気づく。

「ヘンリック様、大変よ。私……貴族のお付き合いがわからなくて、お祝い事に何も贈ってないわ」

朝食の席で言葉にする。まだ食堂へ行くのは禁止なので、寝室に用意した円卓だった。小さめの円卓は、広間で花瓶を飾るときに使ったらしいわ。大きさがぴったりなのよね。

きょとんとした顔で止まったヘンリック様の手に、レオンがパンを押し付ける。今もパンを千切る係を黙々とこなしていた。私も受け取って、口に入れる。少し待てば、我に返ったヘンリック様が慌てた。

「それは……その……フランクが、そう彼が贈っていたぞ。家令の仕事の一つだからな」

なぜ慌てているのかしら。首を傾げる私に、ヘンリック様は額を押さえて溜め息をついた。

「すまない。実は……」

切り出されたのは、思わぬ話だった。結婚当初の私を信用できなくて、フランクに権限を与えた。女主人としての仕事の一部は、フランクも私に任せていたの。でも、贈り物関係はなかったわ。

そのまま戻すのを忘れ、フランクもごく当たり前に仕事の一部としてこなす。結果、私が何も知らないままだった。悪気はなかったと白状するヘンリック様は、可哀想なくらい 悄気(しょげ) ている。最後に「すまなかった」と付け加えた。

「おとちゃま、めっ?」

肩を落としたヘンリック様の姿に、レオンは無邪気にダメ押しする。止めを刺したら可哀想よ。首を横に振って、受け取り方を変えた。

「お母様が慣れるまで、お仕事をフランクに任せていたの。ちゃんと謝れたから、お父様は偉いのよ」

「うん」

レオンは理解していない様子ね。とりあえず頷いて、千切ったパンをヘンリック様の手に載せる。先ほどから積み重なったパンの山が崩れそう。

「ヘンリック様、食事を続けてください。もう気にしないで……あの頃の私に預けなかったのは正解ですもの」

ふふっと笑い、レオンと過ごす時間が楽しかった話をする。社交がないから、生活のすべてをレオンに傾けた。あの頃と今は違うけれど、だからこそ 初心(しょしん) に帰ることも大切だと思うの。

レオン中心に過ごした楽しさも、ヘンリック様が加わって楽しくなった今も。全部、素敵な思い出よ。本心で口にしたからか、ヘンリック様の表情が明るくなる。

「今後は、女主人の役目だな」

「フランクで問題ないなら、このままがいいわ」

折角の提案だけど、レオンやローズと過ごす時間が減るもの。もちろん、ヘンリック様も……笑顔で伝えたら、フランクの仕事になった。ごめんなさいね、フランク。給料は奮発しておくわ。