作品タイトル不明
501.役立つけど使い方の違う抱き枕
羞恥心より、痛みの方が強かった。筋肉痛なのか、全身が痛い。動かすだけでギシギシ音が聞こえてきそう。全部お任せで、お水のコップさえ運んでもらう有り様よ。
「あい! おかぁしゃま」
レオンは嬉しそうに私の世話を焼く。ヘンリック様も先程まで一緒に手を出していたが、緊急の書類で呼ばれた。王宮側もいろいろ配慮してくれて、書類を運んできたらしいわ。
緊急だから仕方ないけれど、執務室へ向かうヘンリック様の不機嫌なこと。ベルント達には申し訳ないけれど、おかしいわ。笑うのは堪えた。拗ねちゃうもの。
書類を運んだのは文官で、馬車ではなく騎士の後ろにへばり付いて到着した模様。くすくすと笑うリリーが教えてくれた。帰りも騎士にしがみ付いて馬に乗るのかしら。私も緊急時用に乗馬を嗜んだ方が良さそう。少なくとも、情けない姿を晒さずに済むわ。
「奥様は大仕事を終えたのですから、しっかり休んでいただく必要があります」
イルゼに言い渡され、絵本の読み聞かせ役もマーサに取られてしまった。弟妹は入れ替わり立ち替わり、順番に顔を見せる。私の世話を焼きたいんですって。
「変よね」
「いいえ。奥様にお世話になったと常に話しておられましたし、恩返しがしたいのではありませんか」
リリーは私の体を拭きながら、そう話した。疲れて持ち上がらない腕や背中の汗も、温かなタオルで綺麗に拭いてもらう。すっきりしてお礼を言えば、笑顔が返ってきた。
「ぼくも、した」
「そうね、ありがとう。レオンのお陰でさっぱりしたわ」
顔を拭くタオルを絞ってくれたの。まだ力が足りないレオンだけど、頑張っていた。その気持ちが嬉しいわ。たくさん褒めて、隣に寝るようお願いする。大人ぶりたい騎士様は、ベッドの上によじ登った。
「レオンが一緒にいてくれると安心だわ」
「……うん」
照れたように小さく頷き、がしっと抱きつく。力を込めた腕をぽんと叩いて、横になった。一緒に転がったレオンは、胸元に顔を近づける。ぎゅっと閉じ込めるように抱いて、横向きになった。
お父様達お手製の抱き枕が、リリーの手で押し込まれる。背中を支えるのに役立っていた。妊娠中からだけど、レオンやヘンリック様と手を繋ぐから、抱き枕は背中を支えていたの。お腹が大きくて大変な時期は、レオンを包むように抱っこしたヘンリック様と向き合った。
後ろに転がらないための抱き枕は、名称を変えた方がいいわね。でも柔らかくてしっかり役立った。今も同じように背中を支える枕は、受け取った頃と形が違う。変形して、さらに背中にピッタリだわ。
「あのね……いもぅと、きゅ、した」
指先をこんなふうに握ってきたの。レオンの説明を聞きながら、頬が緩んでしまう。可愛い天使が赤ちゃんに指先を掴まれるなんて、宗教画みたいで素敵。近くで見たかったわね。