作品タイトル不明
499.レオンの予言がぴたり
すっごく眠った気がしたのに、実際は一時間程度だった。目を覚ましたら、部屋に皆が集まっている。お父様はベビーベッドを覗き込み、弟妹達はソファーに並んでいた。レオンはベッドの上で、私の髪を掴んで寝ている。
「奥様、目を覚まされましたか」
「起きたのか?! アマーリア、ありがとう」
イルゼの声に反応したのは、ヘンリック様だった。見回した中にいないと思ったの。ベッド脇で椅子にもたれ眠っていたみたい。
イルゼの話では、私の出産は半日ほどだったそうよ。事前に用意してもらった綱を掴み、全力でいきんで……玉のような赤ちゃんを産んだと。そういえば、綱を掴んでいた記憶があるわ。でももう撤去したのかしら。見当たらなかった。
「ヘンリック様……」
「可愛い娘を産んでくれてありがとう」
倒れるように眠った私は、娘と初めての対面となった。おくるみに包まれた赤ちゃんは、想像より小さい。あんなにお腹が膨らんだのに、本体は小さいのね。赤みの強い肌で、くしゃくしゃの顔……目を閉じているので色はわからない。寝ているの?
私の疑問を感じ取ったように、抱く人が変わった赤子が泣き出した。火のついたような……って、こういう時に使うのでしょうね。全力で、全身を使って泣く。ほわりと顔が緩んだ。鼻が潰れた感じだし、やたらと目が大きい気がする。でも、可愛いと感じた。
「女の子だったのね」
「ああ、レオンの予言が当たったな」
ヘンリック様は穏やかな口調で微笑む。大きな手が私の髪を優しく撫でた。お父様は感涙して目元をハンカチで隠すのに必死だ。苦笑しながら、ユリアーナは刺繍付きハンカチを差し出した。エルヴィンは何やら紙に文字を綴っている。
「名前の候補を記しているんです」
有名な才女の名前、それから歴代の王妃様や女神様のお名前も。どれを選んでも素敵だわ。名前リストは、さまざまな人から出た候補らしいわ。私が気を失うように眠っている間に、あれこれ考えたんですって。
「名前は後にしよう。まずは体を休めてくれ」
「お乳をあげたいわ」
初乳は、赤ちゃんに必要な栄養や免疫が含まれている。この世界で、そんな知識はなかったみたい。乳母が与えると言われたが、首を横に振った。普段はいいけれど、初乳は譲れないわ。
「アマーリアの好きにしたらいい」
ヘンリック様を除く男性は外に出された。もちろん、お父様達も例外ではない。家族でも裸を見るのは別だもの。眠っているレオンはそのままにした。起こしてまで追い出したら、トラウマになっちゃうわ。
必死に飲む赤ちゃんは、まだ授乳の初心者だ。それは私も同じだった。なかなか上手に吸えなくて、泣き出してしまう。あやす私の横から、レオンが顔を覗かせた。起こしてしまったかしら?
「いもぉと。どちて、なく、の?」
「お腹が空いたのよ」
レオンを優先して話しかけ、頷いたのを確認して赤ちゃんに向き直る。さて、母親の初心者らしく頑張ろう。そう思ったのに、サポート役が有能だった。イルゼに言われるまま抱く腕の角度を変えたら、すぐに飲んでくれたわ。