軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

495.妹の可愛い相談ごと

妊娠してから、暇になると思った。一日を長く感じるのでは? と……逆だったわ。最初は悪阻で食事ができず、途中からやたら眠いの。起きていられなくて、寝てしまう。

イルゼは「そういう方もおられます」と言うけれど、本当かしら。こんなに寝ているのに、夜も眠いのよ。病気じゃないかと心配になる頃、お医者様の定期検診があった。話を聞いてもらったところ、イルゼと同じ言葉が返ってくる。疑って申し訳なかったわ。

夏の暑さで 汗疹(あせも) ができてしまい、顔色を変えたリリーやマーサに冷やされたのも、いい思い出になりそう。レオンは夏の間、元気に庭を駆け回った。日焼けして、夜に肌が痛いと泣いたわね。少しずつ気温が下がる時期になって、オイゲンが実家に戻ることが決まった。

「お姉様、ちょっといい?」

「もちろんよ、ユリアーナ」

午前中、勉強している兄弟を置いて、不安そうに顔を覗かせる。レオンも勉強部屋にいるから、見つからずに抜け出すのは苦労したでしょう。横幅のある低いソファーに寄りかかる私は、リリーの手を借りて起き上がった。

お茶を用意してくれるよう頼み、ユリアーナを手招きする。

「その顔は……悩み事かしら」

「うん」

幼い頃の受け答えになるユリアーナは、言いにくそうに溜め息を吐いた。自分で話すまで待つ。簡単そうで難しいのよ。つい「オイゲンのこと?」と聞きたくなってしまう。

お茶を用意したリリーが、茶菓子として蒸したお芋を並べた。これは私がお願いしているの。お砂糖たっぷりのお菓子ばかり食べていたら、必要以上に太ってしまう。妊婦は大きくなるけれど、太り過ぎてもダメなのよね。

お芋はお腹が張るけれど、腸の掃除をしてくれると聞いた。便秘気味だから、有難いわ。たくさん食べると後が大変ね。塩を振りたいけれど、我慢して口へ運ぶ。同じようにお芋を手に取った妹は、黙々と皮を剥いた。集中していると思ったら、お芋を皿に戻した。

「オイゲンが実家に戻ると聞いたの。ご両親と仲直りできたのだし、お兄様とも親しくしていて」

そこで言葉を呑み込む。私も噛んでいたお芋をお茶で流した。喉に詰まるのよね。

「いいことなのに……」

「寂しい、悔しい、それとも……嬉しいの?」

つい口を挟んでしまった。目を見開いたユリアーナは、剥き終えたお芋を私の手に握らせる。食べないのかしら。

「全部だと思う。家族と暮らすのはいいことよね。わかっているのに、取られた気がしちゃう」

「それが普通よ。ずっと一緒だったんだもの」

驚いた顔をするユリアーナを見ながら、もらったお芋を齧る。甘くて美味しいわ。

「婚約するほど好きな人よ? 一緒に居たいのは当然だわ」

「……悪いことじゃないの?」

「問題ないわ」

ほっとした顔の妹に、悪い知恵を授けた。本音をオイゲンにぶつけるといいわ。きっと、喜んでくれるから。