軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

493.夜の大運動会ね

いつもより早い時間のお昼寝、昼食を飛ばしておやつ。レオンは夜に目が冴えてしまった。普段と生活リズムが変わったから仕方ない。でも夜なのに、猫を見たいと騒ぎ出す。どうせ寝ないのなら、邸内のお散歩もいいわね。

軽く考えたのに、ヘンリック様は違った。侍従を呼んで廊下を煌々と照らす。万が一にも躓かないよう、がっちりガードされた。

「足元に気をつけろ」

「はい、ありがとうございます」

こういう親切は素直に受け取る。大丈夫よ、なんて余計な発言はしないわ。これも愛情表現の一つだもの。腕を絡めて歩く先を、レオンが走っていく。明るい廊下に大興奮ね。

お父様達が離れに引き上げてから、さらにはしゃいでる気がした。猫部屋の中に入らないよう、レオンに言い聞かせた。

「どちて?」

「レオンは寝ているところに入ってきて、起こされたら嫌でしょう? 猫も同じよ」

「うん、ねてぅ、しぃ」

指を唇に当てて「静かに」のジェスチャーをする。小さい子の仕草って、どうしてこんなに可愛いのかしらね。でも人差し指に中指も添えちゃってるから、投げキッスのポーズみたいだわ。

廊下側の扉は、本来通りの木製だ。内側はガラスの小部屋があり、扉もガラス製だった。その木製扉を開く前、廊下の灯りをしぼる。猫には明るすぎると思ったの。ところが……ガラスの前には、爛々と輝く猫達の目が!

ガラス越しに飛びかかっては、ダッシュしている。そうだったわ、すっかり忘れていたけれど……猫は夜行性だった。人が来て遊んでもらえると思ったのか、大喜びだ。レオンはうずうずして、今にも飛び込みそう。

「ちょと! いぃ?」

このくらいと手で時間を示すのは、ユリアーナの癖だ。それを真似て、レオンはこてりと首を傾げた。いいでしょ? とお強請りする姿に負けて「少しだけ」と許可を出す。二重扉の内側へ、レオンが入った。

どうせ起きているのなら、と灯りをつけて明るくする。レオンが走り回るのを、ガラスの小部屋で見守る。車椅子が運ばれてきて、私は座るよう促された。やっぱり断らない方がいいわよね。素直に腰を下ろす。

座ると足がじんとして、疲れていたことに気づく。血が一気に動く感じで、これは無理をしたかもと反省した。羊水や赤ちゃんの分だけ体重が増えたんだもの。足にも負担が掛かっている。

「レオン、そろそろ寝るぞ」

「やっ、もちょ、と!」

「約束を守れない子は、騎士になれないぞ」

「もどゆ!」

よほど騎士への憧れが強いのね。即座に帰ってきたわ。褒めてあげようと思ったら、先にヘンリック様が手を伸ばした。レオンを抱き上げ、ぽんぽんと背中を叩く。

同行するリリーが車椅子を押し、ヘンリック様はレオンを抱いたまま寝室へ向かった。約束を破らないのが立派な紳士で、騎士でもある。今日のレオンは偉かった、褒めながら歩くヘンリック様の声に聞き入った。

「ヘンリック様、私……あなたの妻で良かったと思っています」

「っ!」

感極まったヘンリック様に抱き上げられ、ベッドに下ろされる。唇から頬、額まで。複数のキスを受けた。レオンが「ぼくも」とベッドに乗り上げ、私の頬に唇を押し当てた。

「え? いま……」

「ああ、レオンが自分一人で登った、か?」

顔を見合わせて、頑張ったレオンの初めてを喜び、手を繋いで眠った。最近、私が真ん中なのは何故かしら。レオンが落ちないか心配だわ。