作品タイトル不明
491.相応しい子がいれば推薦するわ
エルヴィンが上手に対応しているので、ユリアンも騒動を起こしていない。ユリアーナは気まずいのでは? と心配したけれど、ローレンツ様は嫁にする発言を忘れたように明るい。問題なさそうね。
レオンとルイーゼ様は座り込み、カールハインツ様の髪で遊んでいる。あれは止めた方がいいかしら? でもカールハインツ様が嫌なら、ご自分で止めるわよね。
一応、イルゼに気をつけてくれるよう頼んだ。私の配慮を、マルレーネ様はからりと明るく笑い飛ばす。
「平気よ。最近はね、ルイーゼと仲がいいの。ローレンツも含め、兄妹仲が良くて助かるわ」
仕事が終わると、カールハインツ様がルイーゼ様と過ごす。本を読み聞かせたり、人形遊びに付き合ったりするらしい。ローレンツ様は逆で、昼間に外で走り回る。ルイーゼ様も外遊びの時間が増えて、楽しんでいると聞いた。
「素敵ですね」
うちは弟妹がレオンと遊んでくれるから、退屈しないで済んでいるのよね。一人っ子では寂しかったと思うわ。
「側近の話、覚えている? カールハインツとエルヴィンは気が合うと思うの」
「オイゲンも気が合いますわ、ほら」
マルレーネ様に示したのは、二人の幼子に遊ばれるカールハインツ様を助けるオイゲンだった。二人の気を引いて、自分が犠牲になる辺り……彼らしいわ。
「ティール侯爵家の……?」
「ええ、次男のオイゲンです。我が家で預かっていますから、エルヴィンとも仲がいいんですよ」
オイゲンはレオン達に丁寧に接する。交互に飛びつく幼子を抱き上げ、ゴロンと転がした。楽しいのか、ルイーゼ様もレオンも笑いながら戻ってくる。忙しそうな彼を手伝う形で、エルヴィンが加わった。すると受け止める側で、カールハインツ様が手を広げる。
オイゲンやエルヴィンに転がされた二人は、カールハインツ様に支えられて駆け戻った。楽しそうだけれど、そろそろ止めないと気持ちが悪くなるわ。リリーとマーサに伝えたところで、レオンがぺたんと座った。ふらふらするルイーゼ様も寝転がる。
「国王の側近は名誉職よ。シュミット伯爵家なら資格は十分、なのに譲ってしまうの?」
少し意地悪な発言をしたマルレーネ様は、私の真意を探るように笑みを消した。ベッティーナ様は気遣うように、マルレーネ様を見つめる。母親はどんな場面でも我が子が可愛い。私の返答でマルレーネ様が傷つかないか、心配しているのね。
試すマルレーネ様の気持ちは理解できた。王になって苦労する我が子に、心許せる友人を得てほしい。どちらも理解できるけれど、私の返答は変わらないわ。
「弟より相応しい子がいれば、推薦しますわ。それこそが、国王陛下への忠義ですもの」
「そうだな。今のオイゲンなら俺も推薦する」
目を見開いたマルレーネ様は、カップを手に取って一口。やや時間を置いてから溜め息を吐いた。
「ダメね。いつも損得を考えてしまうの。悪い癖だわ」
そう呟いて、楽しそうに遊ぶ子供達に優しい眼差しを向けた。