作品タイトル不明
490.カールハインツ様もまだ子供枠
マルレーネ様の一言で、シュミット伯爵家の弟妹も呼ぶことになった。当然、監督役としてお父様が同行する。全員が集まると客間では狭いので、広間へ移動となった。
フランクが侍従達の采配で離れ、代わりにベルントが付き添う。弟妹の到着が遅いのは、きっと着替えに手間取ってるのね。急だから、普段着だと思う。オイゲンも同行させるよう伝えた。明日、実家から迎えが来ると聞いている。家族を呼ぶなら、彼も一緒よ。
「その巻きスカート、素敵だわ。絹なの?」
「いえ、ガーゼですの」
スリットが入ったスカートの上に巻いたガーゼは、二重になっている。少し透けるが、足の影が見える程度。ガーゼを選んだ理由を聞かれ、通気性を挙げた。
「夏に涼しそうね。取り入れようかしら」
国王陛下の代替わりの頃から、マルレーネ様は前向きで積極的だ。新しいことに挑戦したり、取り入れたりすることに抵抗がない様子だった。ご自分でケーキを焼くなんて、初めて知ったわ。美味しいと伝えたら、同行した実母のベッティーナ夫人と、手を合わせて喜んでいた。
「ベッティーナ様も、今日は陛下の祖母として自由になさってはいかが」
マルレーネ様からは提案しづらいだろうから、私が口にする。柔らかく微笑んで頷くベッティーナ様は、ルイーゼ様を抱き上げて膝に乗せた。
「ばぁば、これ!」
先ほどのレオンの真似なのか。兄の皿から奪ったケーキを手で千切り、ベッティーナ様の口元へ運ぶ。ルイーゼ様に頷き、彼女はやや大きめのケーキを受け入れた。その姿が幸せそうで、見ているこちらも嬉しくなる。
「準備が整いました。移動をお願いいたします」
案内人となるフランクの後ろは、地位の高い順に歩くのが一般的だ。でも今回は家主がヘンリック様で、彼が先を歩く。次がマルレーネ様? そう思ってレオンと後ろへ下がろうとしたら、ヘンリック様に呼ばれた。
「アマーリア、レオン。二人ともここへ」
隣を歩いていいの? マルレーネ様の前を歩くのは緊張するわ。広間の扉を開ければ、弟妹が待っていた。お父様は壁際で使用人と並んでいる。フォンの称号を持つ伯爵が、何をしているのよ。
ぷっと吹き出してしまい、手で口元を押さえて笑う。レオンが「じぃじ」と指差した。それもおかしくて、もう我慢できない。肩を揺らして笑う私に、お父様は困ったような顔で壁際を離れた。ご自分でも間違えたと思ったはずよ。
「子供達は遊んでらっしゃい。カールハインツも、ここでは自由にしたらいいわ」
エルヴィンやオイゲンを目で追ったカールハインツ様は、マルレーネ様の許可に頬を緩めた。弟ローレンツ様と手を繋ぎ、広間の奥に合流する。レオンもルイーゼ様と走り、絨毯の手前で靴を脱いだ。
レオン達がいるから、絨毯を敷いてくれたのね。でも王族を床の上に座らせるのは……と考えたみたい。足首くらいの高さの板かしら? 何かの上に絨毯を敷いていた。上を走り回っても平気だから、平らなのね。
あの大きさ、どこかで見たような? 首を傾げてはっとする。猫部屋に使用した板だわ! あの部屋も絨毯を敷いた場所は段差があったもの。思い出したらすっきりした。