作品タイトル不明
469.贈り物と驚くべき秘密
ヘンリック様の休日に、届いた贈り物を開封していく。あまりの数の多さに、部屋を二つも占領していた。筆頭公爵家に子供ができるのは、王家のそれと同じくらい騒ぎが大きくなるの。フランクの説明を受けながら、柔らかな毛布に目を細めた。
質のいい毛布は、赤ちゃん用の小さいサイズだ。男女どちらでも使えるよう、カラフルな虹の絵が入っていた。虹の根元に刺繍された白いうさぎは、安産祈願だそうよ。うさぎは多産系だものね。マルレーネ様の贈り物を畳んで膝の上に置いた。
カールハインツ様も、個人的に送ってくれたのね。こちらは大きな箱で、まさかのベビーベッドだ。組み立て式なので、ひとまず設置は後回しにした。メモを取るフランクによれば、王家御用達のブランド製品らしい。
バルシュミューデ公爵夫妻は、産着だ。何枚あっても困らないだろうと、複数の色を揃えてくれた。しかもサイズ違いまで……成長しても一年は足りそう。
高位貴族はプレゼントの規模が違うわ。貧乏伯爵家出身の私は、お返しを考えて背筋が凍りそう。こういう采配は、フランクの意見を聞けば間違いないと思うけれど。
「あら、それ……素敵ね」
ベビーメリーのような飾り物が出てきた。赤ちゃんのベッドの上に吊す玩具だ。起きた時も揺れる飾りを見て、赤ちゃんは楽しめる。見た感じ、手作りっぽいかしら。
「ギードの母上だな」
開封したオイゲンが呟く。ということは、シラー男爵夫人ね。オイゲンも含め、出会いは最悪だった。でも心を込めた贈り物をする仲になれたのは、よかったわ。先日の武闘会観戦の後で、親しく話ができたお陰でしょう。
「こっちはバルツァー子爵家だぞ」
ユリアンが見つけて、引っ張り出す。積み上げた順番を無視して、途中から抜いたら……っ! ほら、崩れちゃったじゃないの。ユリアンの頭の上に二つほど箱が落ちてきた。器用に一つを受け止めたエルヴィンだが、もう一つは直撃する。
「ユリアン、気をつけて」
「……いってぇ……角が当たった」
ぼやきながら、ユリアンは箱を押し除ける。中身は贈り物なのだから、大切に扱って頂戴。侍従達が崩れた箱を戻し、再び開封作業が始まる。
ユリアンは、バルツァー子爵家の箱の包装紙を破いた。勢いよく破り、箱を開ける。
「これ、なんだ?」
「靴下かしら」
形状は靴下だが、小さくて可愛い。ユリアンはなるほどと頷き、数足の靴下を並べた。季節ごとの絵柄が入った靴下は、もしかして手編み?
「手作りかもしれないわ」
「デニスの母上は、裁縫や編み物はできないぞ」
元女性騎士で、細かな作業は苦手だ。刺繍も酷かった。暴露するオイゲンは、少しばかり考え込んだ。
「デニスが編んだかも……」
「え?」
あの悪ガキ……失礼、あの子は編み物ができるの? 驚いた私に、オイゲンは神妙に頷いた。
「驚くと思うけど、刺繍の腕はうちの母上より見事だ」
……その暴露はいらないと思うわ。