作品タイトル不明
466.お祝いの品が届いた
「こちら、王宮からの祝いの品でございます」
「バルシュミューデ公爵家から、贈り物をお持ちいただきました」
王宮で騎士が声を張り上げて、ヘンリック様に伝えた。懐妊のお知らせに加え、大急ぎで彼が帰ってきた事実。どちらも、情報通のお二人の耳に届いたのね。
リースフェルト公爵家は、直々にパウリーネ様が見えられた。先触れをお願いしておいたので、今回もぎりぎりで訪問を知る。仕方ないわね、今朝知ってすぐに訪問を決めたそうよ。手配が間に合わなかった理由を並べ、申し訳なさそうに謝る。
パウリーネ様も成長なさっているわ。それに、訪問してすぐ祝いの言葉とお品を置いて、帰ろうとなさっているの。今までのパウリーネ様からは、想像もできなかった。
「身籠ったばかりは、体調も頭もすっきりしなくて……私も大変だったもの。次は落ち着いた頃にお伺いするわね」
慌ただしく帰っていく彼女に、くすくすと笑った。悪阻があるけれど、そんなに体調は悪くないの。倦怠感も日によって違う。それでも気遣いが嬉しかった。
フランクが丁重に見送り、私は寝室で休む。周囲がぴりぴりして、私があれこれ動き回ると止めるの。もう少ししたら、運動した方がいいとお医者様から指導してもらわないと。足が鈍って、歩けなくなっちゃうわ。
「おかぁしゃま、でき、た」
夢中で絵を描いていたレオンは、床にぺたんと座っている。絨毯が敷いてない部屋では座らないよう伝えたけれど、違いが理解できないみたい。にこにこと楽しそうなので、成長したらもう一度教えましょう。
「何を描いたのか、見せて頂戴」
「これ、おとちゃま……ぼく、おかぁしゃま、いもぉと」
中心に描いた三角は人間なのね。上に頭らしき丸もある。だいぶ絵が進化したわ。その足元に四角があり、これは猫達だった。説明によれば左側から、シロ、ミア、アイ、ザビーネ……最後はアイにそっくりの三毛猫。
後ろの棒はフランクやイルゼなどの使用人と伯爵家の家族だった。ちゃんとオイゲンも含まれている。色を分けて表現するところが、凄いわ。
「皆いるわね」
「うん」
たくさんの色を使ったため、レオンの手は汚れている。濡らしたタオルで、マーサが丁寧に拭った。屈んで手伝おうとしたら、止められてしまう。初の出産はいろいろ大変だと聞くけれど、私より周囲が気を遣い過ぎね。
「おかぁしゃま、ぼく、たんえん、してくる」
「私も……」
「奥様はお部屋でお休みください」
リリーとマーサは、ヘンリック様に命じられている。できるだけ寝室から出ないよう言われたけれど……動かないのも良くないのよ? 赤ちゃんの成長に悪影響だわ。そう主張して、屋敷内の散歩を提案した。
まだ赤ちゃんに進捗はないけれど、お医者様を呼んで説明してもらわないと。一歩歩くごとに、左右で気を配る使用人達に苦笑いが浮かんだ。
そういえば、今日はお父様達を見かけていない。何をしているのかしら。