作品タイトル不明
461.突然の体調不良の原因は?
三歳! を覚えたレオンは、片っ端から出会った人に見せる。フランクなんて、毎日見ているわ。微笑ましいと思っても、毎日だと飽きるのよ。
「レオン、これは聞かれたらやるの。その方が騎士様っぽくてカッコいいわ」
「きし……ちゃま、かっこぃ?」
「ええ、何歳なの? と聞かれたら答えるの。レオンはカッコいい騎士様だから、出来るわよね」
「うん!」
説得を試みたところ、レオンはあっさりと承諾した。せっかく毎日の挨拶を回避したのに、ヘンリック様ったら毎日聞くの。出かける前に、いってらっしゃいの挨拶と一緒に、恒例になってしまった。
「行ってくる、アマーリア」
「はい、お気をつけて」
いつも通りの見送りの直後、ヘンリック様が向き直る。レオンは右手の指を、こっそりと準備し始めた。まだ片手で三歳が出来ず、左手がそっと手伝っている。
「レオン、行ってくる。何歳になったんだ?」
「さんしゃい!」
その指のまま右手を振って見送る。ここ数日、当たり前の光景になった。これでいいのかしら。二人が満足しているなら、私が口出しする必要はないけど。
振り返ると、イルゼも微妙な顔をしていた。フランクは笑いを堪える。そのまま我慢して頂戴。吹き出したらレオンが気にしちゃう。
「奥様、顔色が悪い……っ!」
リリーが心配そうに声をかけた直後、私はぺたりと座り込んでいた。急に力が抜けた感じで、頭をぶつけなかったのはリリーのお陰ね。咄嗟に支えてくれていた。
駆け寄るレオンをマーサが抱き上げ、暴れる幼子に言い聞かせる。少ししたらお母様に触れられる、レオンは唇を尖らせた。不満だけど我慢する、意思表示がわかりやすい。
ぼんやりと考えが浮かんでは沈み、のぼせたような気持ち悪さで目を閉じた。このほうが楽だわ。医師の手配をするフランクの声、イルゼがベッドの準備を命じている。
「旦那様に連絡を……」
「それは、あとで」
すごく心配して引き返してくるはずよ。だから、医師の診断が出るまで待って。フランクは渋々ながらも了承し、私は騎士が用意した担架で運ばれた。というのも、ヘンリック様の指示らしいわ。
緊急時以外、妻を抱き上げるな! ですって。担架がすぐに出てきたのも、命令を聞いて用意したからでしょう。嫉妬深いんだから。
目を閉じて運ばれる間も、吐き気がする。でも実際にはきそうなのではなく、目眩でぐるぐる回る感じ。貧血かしらね。
駆けつけた医師は、大柄な騎士に担がれている。お年を召した先生なので、走るのが遅くて運ばれたみたい。時間をかけて、しっかり診察した後……脈をとりながら診断結果を口にした。私の自己診断は大外れだったわ。
「おかぁ、しゃま……ぐすっ」
鼻を啜り泣き出したレオンは、ベッドの端に下ろされた。手を伸ばしては引っ込める。怖いのね、大丈夫よ。
「おいで、レオン。お母様は病気じゃないの」
涙でぐしゃぐしゃのレオンが抱きつき、大喜びのフランクが伝令を出すため走り出す。屋敷の廊下を走ってはいけないと、戒める立場の人なのに……。