軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

462.祝福が注がれる *** SIDE公爵

王宮に到着し、執務室で書類の采配を始めた直後だった。伝令の騎士が到着し、息を切らせた彼の言葉に目を丸くする。

「おめでとう、ございます! 公爵夫人がご懐妊です」

「ご、かいにん……」

呆然と繰り返す単語は、何度も夢に見た言葉だ。アマーリアに似た可愛い娘が生まれ、俺によく似たレオンと一緒に庭で遊ぶ姿……。いや、まだ早い。生まれていないのだ。

「「おめでとうございます」」

口々にお祝いを言われ、照れたのを隠すために無言で頷く。表情を引き締める俺に、ゼクレス侯爵が近づいた。ぽんと肩を叩かれ、はっとする。

「初めての妊娠で、奥方様も心許ないでしょう。今日は駆けつけた方がいいと思います」

外交官として有能な彼は、何度かアマーリアの件で相談に乗ってもらった。同じように一回りも若い妻を得た侯爵は、目を見てゆっくり頷く。早く帰って妻に寄り添え、それは仕事より優先だ。そう語るゼクレス侯爵の目を見ながら、俺は首を縦に振った。

「仕事は分担してくれ。定時で終わらない分は明日へ持ち越せ。俺の署名が必要な書類は……」

「ご安心ください、対応します」

文官三人の署名で半分はクリアできる。その話は彼らの方が詳しいだろう。任せろと胸を叩く部下に背中を押され、俺は廊下を走った。王宮内を走るのは、緊急時の騎士だけだ。その規定を無視し、全力で走る。

鞍も準備済みの馬に飛び乗った。都合よく用意された馬は、先ほどの騎士の馬か。悪いことをした。後で詫びておこう。

騎士が乗る馬は、鍛え方が違う。屋敷との往復程度なら問題なく走った。鎧を着た騎士と戦に出向くため鍛えた脚力は素晴らしく、飛ぶように景色が流れる。

到着して馬から飛び降り、侍従が手綱を受け取るのさえ確認しなかった。足早に玄関ホールを抜ければ、フランクが扉を開けて待つ。寝室には、シュミット伯爵家の家族も集まっていた。

「ヘンリック様……」

「ありがとう、アマーリア。男でも女でもいい。元気な子を産んでくれ」

「はい」

頷く彼女の微笑みは、いつもとどこか違う。柔らかくなったと表現すればいいのか。愛おしげに、まだ平らな腹部へ手を添えていた。ベッドの上で転がるレオンは、泣き疲れて眠ったらしい。抱き起こそうとしたが、アマーリアは首を横に振った。

このまま寝かせた方がいいのか。起きたらレオンに「よかったな」と伝えよう。そんなことを考えながら、家族や使用人からの祝福の言葉を受ける。宿った命は、これほどの願いや祈りを受けるのか。不思議な感覚に浸りながら、俺はレオンの黒髪を撫でた。

「触れてみますか? まだわかりませんけれど」

穏やかな声で促され、アマーリアの腹に手を当てる。お腹を蹴るはずもなく、心音もわからなかった。それでも……この温もりの中で、新たな我が子が育っている。守るべき者が増えた事実に、俺は感動した。