軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

450.手出しできない深みに嵌る

ヘルダー伯爵家の三男は、成人したら独立させると聞いていた。騎士なり文官なり、手に職をつけて貴族籍を抜ける。それまでは実家で面倒を見る。私はそう認識していたの。

実際、バルツァー子爵家の次男デニスも同じ処置だった。文官になって実家から縁を切る。今は撤回されたので、縁を切る必要はない。一番揉めたのがシラー男爵家だった。長男に問題があるため、次男ギードが跡を取る。となれば、罰が足りなくて母方の銀山の採掘権を差し出した。

この辺の采配は、ざっくりと耳にしている。バルツァー子爵が口にしたのは、それとは違う内容だった。

社交界で、ヘルダー伯爵家は厳しい立場に置かれているらしい。というのも、やらかしたばかりの三男が、別の子爵家のご令嬢に暴言を吐いた。ご令嬢の婚約者がある伯爵家の嫡男だったため、話が大きくなった。

泣かされた子爵令嬢を守る婚約者の家と、ヘルダー伯爵家が対立した形よ。懲りない三男に、嫡子と母親は厳しく接したようだが、当主である父親が甘い。当主の権限が強い貴族家では、これ以上三男が反省することはないだろうと。

バルシュミューデ公爵家が厳しく叱責したことも手伝い、家業が傾いているようだった。誰しも、公爵家を敵に回して付き合う危険は冒さない。

「あの当時から、その片鱗はあった。アマーリアには言わなかったが……」

ヘンリック様が当時感じたのは、不誠実さだった。オイゲンに命じられたから……とすべてを他人の所為にする。自分は悪くない、そう口にするたびにデニスが反論した。伯爵夫人は必死で謝ったが、当主は子供の喧嘩と甘く判断したらしい。

息子の言い分を聞いてあげるのは、信頼関係を築く上でも大切だわ。でも嘘をついたら、その部分は指摘して直してあげる必要がある。このままでは三男が平民になるだけで済まず、家ごと没落するわ。

「バルシュミューデ公爵夫人は、猶予を与えた。リースフェルト公爵夫人も同意したが……どうやら反省せずに終わるようだ」

ケンプフェルト公爵家は関与しない。あれはユーリア様のお茶会で起きた事件だから、結果に口出ししたら越権行為になるわ。このくらいは理解できた。

「気の毒に思うだろうが、これが貴族社会だ。シラー男爵夫人のように、他の対応をするなり……手はあったのだが」

呆れたと滲ませたヘンリック様の口調に、子供達は顔を見合わせた。かつての取り巻き、かつての友人であり同輩。彼の暗雲立ち込める未来に、複雑な思いがあるはず。

ヘンリック様のセリフは、私にも向けられている。気の毒だからと手を出すな、これは忠告ね。安心して、私は何もしないから。