作品タイトル不明
446.高いところから低いところへ
優勝者には、ケンプフェルト公爵とシュミット伯爵家から金貨を。準優勝者にも、レオンの名前で金貨を渡した。お陰で、ケンプフェルト公爵家お墨付きと思われて、わっと盛り上がっている。
レオンも好きそうだし、来年は準備段階から資金を入れようかしら。参加者のケガが少ないから、婦女子も観戦しやすいでしょう。公爵家の名前で、参加者全員に記念品を用意させた。近くで手に入れたブローチよ。大急ぎで裏に記号を刻んでもらったわ。
今後も参加賞としてブローチを出すくらいなら、金額の負担も少ないし、公爵家の評判も高まると思う。
見つけた少年達は親と一緒に来ていた。騎士の一人に伝言を頼んだところ、オイゲンと話したいと返ってきたらしい。あの事件以来、お互いに会えなくなっていた。たとえ罵り合いになっても、気持ちに決着をつけた方がいい。私はそう思うの。
オイゲンは一人で会いに行くと言ったが、残念ながら許可できなかった。ティール侯爵家から預かった以上、監督責任は当家にある。ただ、相手が暴力を振るう可能性が低く、以前の行いを反省している点も踏まえて……エルヴィンの付き添いとした。
騎士が後ろに控えていたら、威圧されて何も言えなくなるでしょう。エルヴィンなら事情を知っているし、間に入って仲裁も可能だった。ユリアンはダメね、一緒になって騒動を大きくするタイプだわ。
「悪いな、エルヴィン」
「気にしなくていい。それより……ユリアンは大人しく待ってるんだぞ」
「俺に注意するより、アナの方がやばくね? アイツ、さっきモップで素振りしてたぞ」
いざとなったら助けに飛び込むつもりだったらしい。後ろ手にモップを持つ妹に、額を押さえて溜め息を吐く。
「そんなこと、黙ってたらわからないのに」
「ユリアーナはここで待機。お父様、お願いね」
頷くお父様がモップを取り上げ、侍従に手渡す。しっかり彼女の手を握り、確保した。ユリアンはユリアーナに叱られながらも、にやにやと楽しそう。
「……おいぇん、どこ、いくにょ?」
「お友達と話しに行くのよ」
「ぼくは?」
「あら、レオンはあの筋肉に触りたいと言ってたでしょう」
準優勝者が、金貨のお礼にレオンへ挨拶を申し出ていた。お父様やヘンリック様も、同じように優勝者に会う。この隣の部屋を使う予定よ。レストランには他にも個室があって、そちらをオイゲンが使うことになった。
意外と広いのに、貸し切りだなんて……贅沢だわ。でも安全を考えると、それが普通なのよね。高位貴族の振る舞いが、少し理解できた気がする。無駄に見えるけれど、それ自体が街にお金を流している。安全を確保しながら、経済も回す。壮大なお話だった。
フランクの教育にあった「お金は高いところから低いところへ流れる」の意味を、ようやく実感する。こういうの、大切ね。