作品タイトル不明
439.明日のために今日頑張る
散歩は切り上げ、部屋でお絵描きをした。というのも、レオンが猫の絵を描いて、飼い主を見つけると言い出したの。ならばと私も協力する。二人で並んで猫の絵を描き、色を塗る。同じ模様の猫を描いたのに、随分と違いが出るのね。
「……奥様、我々で猫の飼い主を捜します。絵をお借りできますか」
フランクに頼まれ、二人で絵を渡した。あの絵を見れば、すぐに飼い主が名乗り出ると思うわ。でもね、レオン……猫は四つ足だから五本目の足はないと思うの。
「今日の分は終わったぞ!」
勉強から解放されたユリアンが、うぉおお! と気合いを入れて伸びをする。そこまで嫌いなのかしら。エルヴィンはまだ夢中になって読書をしているし、オイゲンは読み終えた本を棚に運んでいた。
「お姉様、オイゲンと街に遊びに行ってもいいかしら」
「エルヴィンかお父様について行ってもらいなさい」
「……はぁい。やっぱりダメかぁ」
二人で出かけたかった。ユリアーナが残念そうに呟く。レオンはオイゲンをちらちらと見て、手元のクレヨンを箱にしまい始めた。お父様に止められたエルヴィンが、本を積んで棚に片付ける。真似をして、クレヨンの箱を棚の一番下に詰め込む。
収納場所が違うわ。でも侍従達が目配せしているので、後で直してもらえばいいわね。
「レオン様、偉いな」
「立派だな」
褒めてもらい、にこにこと笑顔を振りまいた。そのまま走って戻ってくる。勢いを落とさず、体当たりされた。この屋敷に来る前から、ユリアン達の体当たりで鍛えた体幹は揺るがない。しっかり受け止めて黒髪を撫でる。
「いい子ね。おやつをお庭で食べるのはどう?」
お昼寝から起きて、猫を捕獲して絵を描く。もうすぐ日が傾き始める時間だった。普段は午前中だけなのに、皆が午後まで勉強したのは理由がある。明日の分を先に学んだの。
「楽しみだな」
「ああ」
ユリアンとオイゲンが拳を軽くぶつけて、にやりと笑う。明日は街で小さな武闘会があった。皆で見に行く約束をしたみたい。私とレオンも馬車で見物に向かうつもりよ。
お祭りではないし、観戦だからレオンには早い気もするけれど。弟妹が遊びに行くと聞いて、家で我慢させるのは可哀想だわ。護衛を用意してほしいと伝えたら、両手に余る数の騎士が用意された。
急遽、ヘンリック様の休みも詰め込まれ、家族皆で出かける騒動に発展している。明日は忙しそうね。
おやつを入れた籠を持ち、レオンと手を繋いで歩いた。後ろで侍女達が、絨毯やクッション、紅茶セットを運んでいる。台風の後、まだ大木が少ない一角に絨毯を敷いた。無事だった芝生は柔らかく、空を見上げて思い思いに休む。
「明日なんだが」
お父様が出かける条件を切り出した。厳しい気もするけれど、悪くないわ。