軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

437.この子、どこの子?

筆を手に絵を描こうとしたら、なぜかフランクが書類を運んでくる。イルゼも女主人としての心得を説き始めた。よくわからないけれど、折角なので二人に付き合いましょう。

「おかぁしゃま。ぼく、ゆんとあしょぶ」

「わかったわ。マーサ、お願いね」

難しそうな話だと思ったのか、レオンは膝から滑り降りた。元気に手を振って、マーサと部屋を出ていく。ああ、もったいない。素敵なレオンの絵が描けると思ったのに。

がっかりしたけれど、書類は積まれている。仕事が先よね。半分ほど崩したところで、レオンがひょこっと顔を覗かせた。

「おかしゃま……」

手を後ろにして、何かを隠している。チラチラ見えるのは、赤い花かも。

「どうしたの?」

気づいていないフリをする。頭の上に赤い花びらと緑の茎が覗いていた。きっと、背中に隠しているつもりなのよ。可愛いわね。

「ぷれれんと、これ」

えいっと花を差し出すも、逆さまだった。手を持ち替えなかったからね。逆手で背中に隠していたのだろう。微笑ましく感じながら、受け取るときに逆手にした。戻しながらくるりと花を回転させる。

「素敵。これをくれるの? 私の騎士様は優しいのね」

花が逆さだったレオンは首を傾げたが、理由がわからない間に私が戻してしまった。本人は元通りと満足そうに笑う。

「お父様の分もあると、すごく喜ぶと思うわ。一緒に選んでくれる?」

「……うん」

はっとした様子で、いま気づいたのね。さすがにヘンリック様が泣いてしまうわ。選んできてと口にしたら、忘れたことを気に病むかもしれない。だから私と一緒に選んでもらう。差し出した手を掴み、レオンは元気よく歩き出した。

途中で猫部屋に顔を出し、おやつをあげる。前世のように鰹節があればよかったけれど、必死で説明したら干し肉の削った粉が出てきた。猫達は喜んでいるので、問題ないわよね。食べづらそうなので、水で少し戻して団子状になっていた。使用人達の工夫がすごいわ。

元気に走り回る猫に手を振って、庭に出たら……アイによく似た三毛の猫と出会った。柄の配置がそっくりだわ。花選びを後回しにして、おやつを見せて誘う。素直に近づくので、アイほど警戒心が強くないみたい。手が届く距離で食べ始めた。

「ねこ……あい、ちぁう」

「そうね、違う猫ちゃんだわ。どこの子かしら」

公爵家の屋敷はもちろん、庭もすごく広い。迷い込んだのか、元々住んでいたのか。捕まえて、使用人に確認してもらおうかしら。迷っている間に、レオンは近づいて飛びかかった。

「レオン?!」

「ちかまーたっ、らめよ」

焦ったせいか、暴れた猫の影響か。レオンは舌を噛んだようで、痛そうに顔を歪めた。