作品タイトル不明
435.欲しいのはお嫁さんではなく……
私が黙って聞いてたので、気を悪くしたと勘違いさせてしまった。
「本当に申し訳ないわ。あの子にはよく言っておくから」
「あ、いいえ。大丈夫です。続きをお願いします」
ユーリア様の説明が再開される。
ランドルフ様は「レオンの姉」だから、ユリアーナを気に入ったらしいこと。どうやら本当に血が繋がっていると勘違いしたようで、ユリアーナをお嫁さんにしたら、ずっとレオンと居られると考えた。子供は飛躍した方向へ全速力だけれど、これはまた見事だわ。
「つまり、レオンのお兄さんになれないなら、ユリアーナはただの憧れのお姉さんなのですね?」
「ええ、失礼な話で……どうお詫びしたらいいか」
「お気になさらず。ふふっ、本当に……あの子がそんなにモテるなんて、おかしいと思っていたの」
笑いが漏れてしまい、我慢できずに肩が震える。きょとんとするユーリア様に、事情をかい摘んで説明した。ついでに、夫が近くに控えている話も。
「心配させてしまったかしら」
「先日、パウリーネ様も飛び込んで来られたの」
彼女の名前が出たら、ユーリア様は納得してしまった。先触れがなかったんでしょう? なんて、笑いながら告げられて首を横に振る。リースフェルト公爵閣下が先触れに全速力を命じたと説明したら、もう堪えきれない。二人で大笑いしてしまった。
「ユリアーナの件はご心配なく。幸い、恋愛感情を持つ奇特な令息がいますの。ランドルフ様にも、レオンとずっと仲良しでいてくださいと伝えてくださいますか」
「もちろんです。本当によかったわ。どうしようかと焦ってしまって」
それでも先触れとお伺いを忘れないのが、ユーリア様よ。これからも良いお付き合いをしていきたいわ。
ノックの音が響いて、レオンが顔を覗かせた。入室許可を出したタイミングで、ヘンリック様も。ヘンリック様が膝に座らせようとしたのに、レオンは嫌だと私の方へ駆け寄る。寝起きでまだ機嫌が悪いのね。
抱き上げて膝に乗せれば、ヘンリック様がわかりやすく肩を落とした。お茶を運ぶイルゼが、目立たないよう夫の背中を突く。姿勢を正していなさいと叱る母親みたいだわ。
「これに懲りず、今後もお付き合いをお願いしたいわ。ランドルフはレオン様の側近になりたいらしいの。次男だから、長男の手伝いをしてくれると思ったのに……親の思った通りには育たないわね」
「だからこそ、子育ては楽しいんですわ。将来の夢は、また変わるかもしれませんし」
始終穏やかに終わった話は、子供達には内緒にする。二人で決めて、なかったことにした。
頂いたお土産は、バターの香りがするフィナンシェのようなお菓子だった。お茶請けにも出したけれど、かなり多く用意してくれたのね。夕食後に皆で美味しく頂いたわ。