軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

433.右手はフォーク、左手で手掴み

明後日、ユーリア様が来られる話をしたら、ヘンリック様もお休みらしい。特に問題なければ、レオンと遊んであげてほしいわ。

「そうだな……バルシュミューデ公爵夫人なら、大丈夫だろう」

それ、パウリーネ様なら別、と滲んでるわよ。指摘しながら笑うと、ヘンリック様も苦笑いして肩を竦めた。

「リースフェルト公爵夫人の騒動の後始末は、俺だけじゃなく公爵も王太后陛下も経験済みだからな」

大急ぎで先触れを出してくれたのも、パウリーネ様の旦那様だったわね。なるほどと頷いた。悪気はないけれど、騒ぎを起こしちゃう。その辺の事情は、彼女の家庭環境にあったとか。

自分勝手で怒りっぽい父親、大人しく従うだけの母親。常に夫の顔色を窺う母親の姿に反発し、自分は出来ると暴走し始めたらしい。周りを巻き込むが、悪いことはしない。その一線が守られているので、周囲が許すのね。

そんな妻の事情も性格も理解して結婚した公爵は、三つ年下の妻が可愛くて仕方なかった。後始末も楽しんでいると聞く。

「複雑なのね」

「どの家庭も何かあるだろう。詮索する必要はないが、これからも付き合うなら知っておいた方がいい」

ヘンリック様は着替えながら、簡単な説明を終えた。私も詳細まで聞き出そうとは思わない。ベルントは無言で作業を続けた。そういえば、ヘンリック様の帰宅時の着替えに付き合うようになったのって、いつだったかしら。

思い返したら、顔が赤くなった。耳や首筋、手も赤いかもしれない。肌を合わせてから? その答えに照れてしまった。

「どうした? 具合が悪いなら」

「い、いいえ。平気よ、少し暑かっただけなの」

レオンはヘンリック様の上着に、ぴょんぴょん飛びついていた。椅子に掛けた裾が、届きそうな距離なのよ。子猫がリボンに戯れる姿に似てるわね。

「レオン、おいたはダメよ」

「あい!」

元気よく返事をしたのに、もう一回だけと飛んだ。そっとベルントが手助けしたため、届いてしまう。指先に触れたら満足したようで、戻ってきた。

また手を繋ぎ、食堂へ向かう。ヘンリック様と私の間で、ブランコをしながら。レオンは何か歌い始めた。最近、音楽の授業が減っていたわ。また練習しましょう。

食堂で皆、一緒に大皿を突く。メインのおかずは鶏肉、唐揚げに近い料理だった。薄い衣がパリパリして、とても美味しい。当然子供達には大人気で、レオンも右手のフォークに刺し、左手でも掴んでいた。

お行儀が悪い。でも……叱るならユリアンが先ね。あの子の真似をしたんだもの。それに、オイゲンも……お皿に山盛りに積んで食べ切れるのかしら。そう思ったら、せっせとユリアーナに食べさせていた。餌付け? 振り返れば、ヘンリック様もお皿に山盛り。

この料理を出す回数を増やしてもらいましょう。お父様もエルヴィンも、口の中が空いてからお皿の上の唐揚げを運んで頂戴。困ったこと……でも幸せな光景だわ。