軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

432.今度はユーリア様ね

緊急の手紙が舞い込んだ。宛先が私なので、開封した。送り主の封蝋はバルシュミューデ公爵家だ。ユーリア様に、ユリアーナの件でお礼の手紙を出した返信でしょう。

便箋はほんのりと甘い香りがした。上品で素敵ね。

「おかぁしゃま、おかち、におい」

「お菓子ではなくて封筒よ。どうぞ」

便箋はまだ読むので無理だが、封筒にも匂いが移っている。受け取ったレオンは、くんくんと匂いを嗅いだ。お花かと思ったけれど、バニラなどお菓子用ハーブの香りかしら。

「あら、あらあら」

訪問のお伺いだわ。緊急でごめんなさいねと前置きし、明後日の日時が記載されていた。私は特に予定がないので構わない。これは急いで返事をしないと、ユーリア様が準備できないわ。手早く返信を用意して、封をする前に柑橘系の香りを添えた。

封筒や便箋に直接吹きかけるとシミになるので、吹きかけた紙を封筒に忍ばせる。色がない香水なら問題ないのよね。お手紙用の香りって、需要がありそうだわ。公爵家はガラスボタンを流行らせる予定だった。エルヴィンやお父様と話して、伯爵家の領地で生産したらいいかも。

いろいろと思いつくけれど、前世の便利だった生活は要らない。あれは持ち込んではいけない技術だわ。私は今のゆったりした生活が好きだもの。チート知識で改革なんて、次の転生者にお任せしたい。

レオンと楽しく過ごして、身の回りを少し華やかにできたら、それ以上は望まないわ。

「これをバルシュミューデ公爵家にお返しして」

控えていたリリーに手渡し、フランク経由で送ってもらう。今日はレオンと積み木をして、鍛錬という散歩に付き合い、お昼寝もした。充実した一日だったわね。

「私の小さな騎士様、玄関までエスコートをお願いできるかしら?」

「うん、できゆ」

走ってくる途中で、興味を失った封筒を放り出す。叱るか迷って、まだ早いとやめた。

「レオン、封筒が落ちたみたい」

「ん? あ、おちた!」

落とした封筒に駆け戻り、拾って走ってくる。私に「どじょ」と差し出し、手を繋ぐ。受け取った封筒は便箋と合わせて、マーサが専用の箱に入れた。

「おとちゃま!」

「ええ、お迎えしなくちゃね」

そろそろ馬車の音が聞こえる頃よ。廊下に出ると、侍従や侍女が足早に、けれど見苦しくない所作で玄関へ向かう。ぴったりだったみたい。

「ぃもーと、できた?」

「まだわからないわ」

この質問、何回繰り返したか。でもうんざりはしない。それだけ楽しみにしている証拠だものね。