軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

431.朝から離れに突撃したのね

オイゲンは朝食後、まだ勉強を始める前に到着した。せっかくご家族と過ごすのだから、もっとゆっくりしたらいいのに。そう思った私は、続いた報告に驚く。

離れに直行したオイゲンは、その場で膝を突いて婚約を申し出たらしい。ユリアーナは「やっと言った」と唇を尖らせながらも、嬉しそうに頷いた……え? 本当にうちのユリアーナの話なの?

朝食を運んだ侍女に、何度も確認する。彼女は笑顔で「間違いござません」と言い切った。

婚約……まだ九歳になったばかり。未来を決めてしまっていいのかしら。勉強部屋に来たお父様に話すと、さらりと返された。

「リア、お前があの子達の母親代わりを始めたのも、今のアナくらいの歳だったぞ」

同じだ、心配はいらない。うちの子は皆、しっかりしているからな。言い切ったお父様の姿に、溜め息が漏れた。だって、私が三人の面倒を見ていたのは、他にいなかったからよ。もし家に使用人がいたら、任せたはずだわ。

九歳十歳なんて、まだ子供よ。料理しようにも戸棚に手が届かなくて、掃除用具も大きくて、大変だったんだから! 叱るように口にすれば、お父様はへにゃりと眉尻を下げた。

「すまない。私のせいだったな」

「私があの子の歳だったら、結婚を決めたりしないわ」

まだ早い。腕を組んで言い切れば、後ろから袖を引っ張られた。振り返れば、ユリアーナが真剣な表情で反論する。

「私が決めたの。彼か私が心変わりしたら、その時に考えるわ。でも今はオイゲンがいいの!」

誰かに渡したくない。好きだと目を見て告げる妹の頑固さに、これ以上の反対はできなかった。もう親の言い分に従う年齢ではなく、自分で判断できると言いたいのね。

「でも十六歳までは仮の婚約にしましょう。ティール侯爵家とシュミット伯爵家、それぞれに解消の書類を用意します。いいわね?」

当事者の意見を尊重するが、トラブルが起きたら婚約は解消される。だから言動に気を付け、互いに尊重し合いなさい。

「わかったわ」

あっさりと受け入れたユリアーナは、勉強机に向かう。後ろで黙っていたユリアンは唇を尖らせた。

「オイゲンはいい奴だけどさ、そういうんじゃなくて……」

「オイゲンが兄弟になるのは嫌?」

問いかければ、首を横に振った。

「いや、王子様よりいい」

それもどうかと思うわ。他人の前では口にしないよう言い聞かせれば、当然だろと肩を竦める。あなたの世渡り上手なところは評価するけれど、ぽろっとミスをして事件を起こしそうなのよね。

「ぼくの、あにゃ……まだ?」

「レオンも、アナじゃなくて妹よ。い、も、う、と……言える?」

「いもぉ、と」

よく出来ましたと褒めて、一緒に粘土を捏ねた。出来上がったのは、たぶん猫よね? 不思議な顔立ちの粘土細工は、侍従達の手で乾燥させ食堂の一角に飾られた。