作品タイトル不明
428.パウリーネ様らしい訪問
オイゲンが戻ってくるまで、あと一日。のんびり構える私は、突然の先触れに驚いた。
「パウリーネ様が……?」
「はい、先触れと同時に出られたそうです」
フランクの報告に、急いでお茶の準備を手配する。すでにイルゼが動いていると聞いて、ほっとした。ヘンリック様は朝から王宮の仕事に向かった。呼び出す事態にならずに済むといいけれど。
慌ただしく出掛た様子を聞けば、緊急事態を予想する。でも……あのパウリーネ様だから。突然何か思いついて、我慢できなくなったのかも。すぐ話したくなる時ってあるもの。
着替えようか迷って、そのままお迎えすることにした。以前にイルゼ達に口酸っぱく注意されたことを守っていて、本当に良かったわ。いつ誰に見られるかわからないから、足首が見える服や粗末な服はダメ。結婚指輪も常に着けておく。
こんな事態は滅多にないでしょうが、緊急で旦那様が戻った時に妻が見窄らしいと困惑するでしょう。貴族夫人の装いは、家の格を表すもの。裾が長いと思っても、我慢することは必要だった。何より、私のせいでヘンリック様に恥をかかせるわけにいかない。
裾を確認し、ふと思いついてスカーフを持ってきてもらった。大判の華やかなスカーフを巻いて、ひとまず誤魔化す。これなら地味服に見えないわよね。シンプル過ぎて、レースもフリルもないワンピースも、それなりに見えるわ。
「奥様、リースフェルト公爵家の馬車が到着なさいました」
「今行きます」
「ぼくもぉ」
レオンが勢いよく手を上げる。夢中で積み木で遊んでいたレオンは立ち上がり、当然のように手を伸ばす。その手を握って、望む言葉を与えた。
「では、小さな騎士様。エスコートしてくださいね」
「あい!」
元気に返事をして、レオンは意気揚々と廊下へ出た。隣を歩きながら、歩調を合わせる。玄関でお客様を待たせることになるけれど、そもそも忙しく訪れたのはパウリーネ様だ。少しくらいは我慢していただこう。
「急にごめんなさいね、アマーリア様。私、思いついたら我慢できなくて」
姿が見えるなり、やや大きめの声で謝罪する。想像通りの展開に、ふふっと笑ってしまった。私が怒っていないと判断し、パウリーネ様は安心した様子だった。
「お話を聞きますわ」
さっと案内に立つのは、フランクだ。イルゼはお茶の準備をしている頃だろう。玄関脇にも客間はあるが、奥へ進む。これは家格に合わせた対応だった。爵位が低いほど、玄関に近い客間を使う。招かれぬ客の場合も、玄関近くを使って意思表示すると聞いた。
パウリーネ様を疎ましく思っていないと示すため、奥の客間を準備してもらったのだ。客間の装飾や家具を褒め、お茶を用意したイルゼが壁際に控えると……パウリーネ様は用件を切り出した。