作品タイトル不明
423.帰りの馬車も賑やかだった
お茶会は大成功に終わった。べらべらと話し続けたお父様は、馬車の中で撃沈していた。自分で反省できているなら、今回は叱らないでおくわね。
ユリアンはローレンツ様と意気投合し、一緒に剣術の稽古をする約束をしたらしい。たくさんの兄や姉に遊んでもらったと喜ぶレオンは、疲れて眠ってしまった。最後にルイーゼ様やランドルフ様と砂遊びをしたらしいの。
花壇の煉瓦を平らに敷き詰めるため用意された砂を崩し、見つけた時は砂だらけだった。ユーリア様も苦笑いしていたわ。レオンを大判スカーフの上に寝かせ、髪や肌についた砂を撫でて落とす。
「お姉様、私……ローレンツ様と結婚してもいいわ」
「は、い?」
驚きすぎて、ユリアーナを凝視する。妹が血迷った発言をしたけれど……と視線を向ければ、ヘンリック様が事情を説明してくれた。遊んだ際に、ローレンツ様が「お前、いい奴だな。嫁に来てもいいぞ」と口にしたのだとか。
仲良しになったユリアンと同じ顔で、しかも一般的な貴族令嬢と違う。淑やかなフリも最初だけで、すぐに地が出た。スカートが乱れても気にせず走り、ユリアンを捕まえる。対等に遊べる相手として、認定されたみたい。
「ローレンツ様は騎士として、陛下を支えたい人だ。普通の貴族令嬢では、物足りないそうだ」
「……そう」
ヘンリック様は柔らかく表現したけれど、つまりは対等に遊べる女の子を初めて見たのね。友人の妹なら一緒に遊べるし、家柄も申し分ない。結婚相手に最高と思ったみたい。中途半端に、王族の教育と子供の我が侭がミックスされていた。
「当事者がよければ、いいと思うけれど」
姑になる人が、マルレーネ様なら心配ない。下手な貴族に嫁ぐよりいいかも。王族といっても臣籍降下が決まっている第二王子……今は王弟殿下ですもの。婚約は後にして、友人になるのは将来のためにもプラスだわ。
「お前には、ローレンツ様は勿体無い」
「うるさいわね!」
双子が喧嘩を始め、エルヴィンが止めに入る。ユリアンの髪を引っ張る彼女の姿を知っても嫌わないなら、結婚もありだと思う。ユリアーナ本人の目指す玉の輿にぴったりじゃない?
揺れる馬車の中、ヘンリック様は私とレオンを支えて座った。ぐっすり眠ったレオンのまつ毛の長さが、羨ましくなる。
「屋敷に着くぞ」
ヘンリック様の声掛けで、喧嘩はぴたりと止んだ。ユリアンを蹴っていたユリアーナの足が、スカートの中にしまわれる。ふふっ、イルゼやフランクは怖いものね。叱られないよう、身だしなみを整えた方がいいわ。
こんなお茶会なら、もう少しラフな服装で集まりたい。今度提案してみようかしら。子供達があんなに夢中になって遊ぶと思わなかったわ。
台風に負けた我が家の温室も、いずれは今日のようなお茶会で賑わえば嬉しい。止まった馬車の扉が開くのを見ながら、私もスカートの裾を確認した。