作品タイトル不明
421.未来の王妃は温室会議で決まる
息子に好きな女性がいて、彼女は王家に嫁げる家格の侯爵令嬢である。他貴族の手前、公爵令嬢に先に声をかけた。ヴェンデルガルド嬢は婚約間近という推測を経て、侯爵令嬢とセッティングが可能になる。
「王侯貴族は面倒ですわね」
「ええ、自由に相手を選べないのが普通ですが、恋愛結婚で幸せになれる方もいらっしゃるのに」
パウリーネ様の言葉に、意味ありげな視線を流すユーリア様が続く。三人の視線を集めてしまい、恥ずかしくて顔が赤くなった。
「そ、それで……どちらのご令嬢ですの?」
話を逸らす意図を明確に示し、私は切り返した。余裕を見せてころころと笑うマルレーネ様は、まだ内緒よ……と前置きした。
「ティルビッツ侯爵令嬢よ」
ティルビッツ侯爵家は、フォンの称号を持つ家柄だ。王妃を出してもおかしくない。ユーリア様情報によれば、ご令嬢が一人と、嫡男の弟君が一人。王家に娘が嫁いでも、跡取りは問題なかった。
「どこで出会ったのかしら」
「それがね」
奥様達の井戸端会議ならぬ、温室会議に秘密はない。内緒と口にしながら、次々と惜しみなく情報が公開された。
カールハインツ様が視察で街に出たところ、馬車の車輪が壊れて立ち往生した。近くの孤児院へ寄付と差し入れに来て、帰り道のティルビッツ侯爵令嬢が声をかけたのだとか。視察に王家の馬車を使わなかったので、見知らぬ家紋もない馬車を助けたことになる。
「素敵なご令嬢なのね」
感心して声が漏れた。見知らぬ家の馬車など、無視しても問題ない。それなのに御者や従者に助力を指示したなら、心根の優しい人でしょうね。
「ええ、とても可愛らしい人なの。だから王妃にするのは迷ったのよ」
マルレーネ様は懸念を口にした。年頃の娘がいる貴族は、王家に嫁がせたいと願う。故に、侯爵令嬢が厳しく当たられるのではないか、と。
「私達が協力することにしましたの」
娘や息子の結婚のために、公爵家二つが手を組む。未来の王妃に余計な発言をしようものなら……ということね。大きく頷いて、私も参加を表明した。
「夫とも相談して、カールハインツ様のために協力いたします」
「これで、あの子がきちんとご令嬢に求婚したら、解決だわ」
ほっとした様子のマルレーネ様は、ここから新しい話題へ移動した。
「側近も決めたいのよ。カールハインツに、エルヴィンをもらえないかしら」
「……本人の意向を確認してからですね」
「他に推薦できる子がいたら、知らせて頂戴」
ローラント様はすでに決まっているとのこと。オイゲンはどうかしら……ティール侯爵家と相談してみましょう。