作品タイトル不明
420.妃選びの下準備も兼ねていた
お父様は知識が豊富で、お喋りが苦手。ヘンリック様も寡黙な方だと思う。けれど、相性は悪くないのね。何やら難しい議論をしているようで、カールハインツ様がいくつか質問していた。
ローレンツ様は話についていけないようで、しばらくするとエルヴィンを誘って離れる。気づいたら皆でかくれんぼを始めたようだ。レオンが走ってきて、私のスカートの後ろへ隠れた。そっとスカーフで覆ってしまう。
「狡いわ、私は……あっちね」
逃げ込み損ねたユリアーナは、近くにあった茂みの後ろへ逃げ込む。鬼役はユリアンだった。すでにエルヴィンが捕まっているのが……なんとも。勉強は得意だけれど運動が苦手なのよね、あの子。ユリアンと足して割ったらぴったりなのに。
ルイーゼ様は兄カールハインツ様の足にしがみ付き、両足の間から顔を覗かせている。ほぼ丸見えじゃないの。ふふっと笑う夫人達の横を、ユリアンが追いかけた。このかくれんぼは、見つかった人も鬼と手を繋いで走るらしい。
別の遊びで、こんなのあったわね。缶蹴り? 違うかしら。エルヴィンの体力が目に見えて減っていく。
「この辺だと思うんだけど……ユリアーナみっけ!」
背を向けて座るユリアーナは、裾が見えていた。ぽんと叩かれ、エルヴィンと手を繋ぐ。視線をレオンへ向けるも、何も言わずに逸らした。茂みに飛び込んだランドルフ様も見つかる。
次にローレンツ様が発見された。絨毯を敷いた段の後ろで寝そべっていたの。服の汚れに侍女が悲鳴をあげそうね。ルイーゼ様が見つかり、最後にレオン。小さい子を後で見つけたのは偉いわ。後でユリアンを褒めてあげなきゃ!
「おかぁしゃま。かぁいた……」
喉が渇いたと訴えるレオンに、用意されたお水を飲ませる。それから果汁を少し。満足した様子で、また走っていく。
「元気ね」
「楽しそうで何よりだわ」
次の鬼がなぜかレオンになり、皆は背中やら足やら、体が見える状態で隠れた。こういうところ、本当に素敵だわ。ハンデを説明しなくても理解しているのね。
「実はね、今日のお茶会……カールハインツの妃選びも兼ねているの」
「あら、側近選びかと思いましたわ」
「そちらも選考中よ」
マルレーネ様によれば、カールハインツ様はすでに好きな女性がいるらしい。けれど、他の貴族の手前、上位の令嬢から顔合わせをする必要があるのだとか。
「未婚の公爵令嬢は、リースフェルト公爵令嬢だけ。バルシュミューデ公爵令息が好きと伺っているわ」
「ローラントはまだ早いと言いますが、そろそろお相手を決めてもいいと思っています」
親同士の話し合いは、子供達の相性を見ながら進む。リースフェルト公爵家とバルシュミューデ公爵家なら、損のない婚姻が結べる。格式も家柄も、何も阻むものがなかった。ローラント様が留学から帰る半年後、見合いをして決めることになった。
「これで、あの子のお嫁さんが決められるわね」
王妃ではなく、息子のお嫁さん。両手を組んだマルレーネ様は嬉しそうに微笑んだ。