作品タイトル不明
414.お墓参りの後は腹ごしらえ
湿っぽくなったが、それぞれに手を合わせてお母様に話しかけた。レオンは心の中ではなく、声に出して「ばぁば、またね」を告げる。お父様の涙腺が決壊して大事件だったわ。持ってきたハンカチを貸しても足りなくて、ユリアーナにも借りたわ。
「レオン、ばぁばに手を振って」
「あい!」
元気に手を振って帰るレオンは、お腹を手で撫でて唇を尖らせた。
「おにゃか、ぺくぺく」
「お腹ぺこぺこ? そうね、何か食べて帰りましょうか。どうでしょう、ヘンリック様」
「そうだな。この近くに店はあるか?」
当然のようにベルントに尋ねるヘンリック様。これまた、待ってましたとばかりに答えるベルント。
「個室のある飲食店を二軒、ご案内可能です」
肉料理の店とピザの店らしい。迷ったけれど、屋敷では食べたことのないピザにした。この世界にもピザがあるのね。見たことないから、どこかの地方のお料理かもしれない。
楽しみにしながら、寝台馬車に乗り込んだ。泣き過ぎて目元の赤いお父様に、ユリアーナが世話を焼き始める。リリーに用意してもらった濡れタオルを当てて、しばらく冷やすことにした。
「おかぁしゃま、じぃじ、いたいたい?」
「ええ、目が痛いんですって。飛んでけ、してあげて」
揺れる馬車内の移動は危険だが、寝台馬車なら問題ない。レオンは器用に這って近づき、お父様の膝をぽんと叩いた。それから御呪いを始める。
「じぃじ、いたいたい、とんへれぇ」
「……ありがとう、レオン。楽になったよ」
一瞬の間は、意味を考えていたのね。先の私の言葉があったから、理解しやすかったと思う。飛んでけは、どうしても「とんへれ」になっちゃうのよ。本人は言えているつもりだから、注意も難しかった。
口々に褒めてもらい、レオンは満面の笑みで戻ってきた。這ってから抱きつく。
「赤ちゃんになったの?」
「うん」
それでいいの。すりすりと膝に頬を寄せ、転がって笑う。オイゲンとエルヴィンが目配せしあい、私からレオンを引き離した。何かを囁くと、レオンは目を輝かせる。そのまま大人しく二人に着いて行った。
「何かしら」
「さぁな」
ぼそっと呟くヘンリック様は、少し拗ねた表情だわ。レオンに妬いたのなら、叱るべきだけど……可愛いと感じてしまう。ぽんと膝を叩くと、そっと頭を乗せた。遠慮がちに、私の膝が痺れないように。
「力を抜いていいですよ」
頭はそれなりに重いけれど、大丈夫です。そう示したら、やや重くなった。まだ力を入れているのね。こういう人だから、強く言ってもダメ。信頼して預けてくれるようになるまで、根気強く付き合えばいい。
ぽんぽんと肩を叩いて、小さな声で歌う。自然と馬車の中は静まり返った。重くない沈黙の中、馬車が止まるまで。