作品タイトル不明
406.独り占めしたかったの?
夜、ひと騒動あった。ヘンリック様が待つ寝室へ入る私が、レオンと手を繋いでいたの。私の髪を乾かす間に、レオンもお風呂に入れたのよ。マーサが手際よく乾かして着替えさせたので、待っていて手を繋いだ。
「おとちゃま、だっこ」
「あ、ああ」
なぜか驚いた顔をするヘンリック様に、私は首を傾げた。普通の夜着だし、髪も乾かし忘れてタオル状態ではない。何もおかしいところはないと思う。
扉からベッドまで走ったレオンが、えいっと飛びついた。ヘンリック様が受け止めて、ベッドの上に乗せる。ところがレオンは膝から降りず、しがみついた。
「おとちゃま、おひじゃ」
もっと膝に乗せてと騒ぐ。半分ほど体がずり落ちているので、追いついた私が押し上げた。膝の上で器用に向きを変えて、レオンはご機嫌だ。背中をヘンリック様に預け、私を呼んだ。
「その状態でお話を聞くの?」
「うん!」
今日のレオンが選んだのは、小さな妖精のお話だ。人間の真似をして失敗し、怒られちゃうけれど、最後はお友達ができる。よくある展開のお話だった。絵本を広げると、折り畳みの展開絵本になっている。森の木々が立ち上がり、妖精が飛ぶ姿を見られた。
「うわぁ……きれぇね」
「本当ね」
相槌を打ちながら絵本を読み進める。街のシーンや悪戯をして逃げる場面、挟まれている仕掛けを広げるたび、レオンは手を叩いて喜ぶ。ヘンリック様も釘付けだった。
本を閉じて「よかったねぇ」と感想を口にするレオンを撫でた。一緒に寝るために場所を空けると……ヘンリック様が何か言いかけて呑み込む。
「どうしました?」
「いや……」
変な人ね。するりと潜り込んだレオンは、目を閉じて大人しくしている。隣に横たわれば、ヘンリック様はそわそわし始めた。でも理由を聞いても、首を横に振るだけ。
ヘンリック様も横になり、少しするとレオンの寝息が聞こえた。もう一度尋ねてみようかしら。そう思った私より早く、ヘンリック様が声に出した。
「レオンの寝室を……作らないか」
「なぜですの?」
「……ここは夫婦の寝室だ」
ああ、やっとわかったわ。ヘンリック様は今夜も……その、したかったのね。求められるのは嬉しいけれど、レオンも我慢したわ。二日も私達と一緒に寝られなくて、寂しかったはず。どう伝えたらいいか。
「ヘンリック様、私、あなたを好きです。求められるのは嬉しい。でも……レオンを犠牲にしたくないの。まだ幼いレオンが落ち着くまで……週に一度くらいではダメですか?」
最大の妥協で提案したら、ぱっと目を輝かせた。もしかして、週に一度寝込むのは確定かも。