軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

402.夫婦の寝室へ突撃した天使

「おかぁしゃま、おき、て」

揺らす動きと幼子の声、反射的に起きあがろうとする。その体を、何かが押さえていた。

「え?」

「おはよう、アマーリア」

「お、はよ……ござ、ます?」

声が掠れる。喉が痛いし、体は怠かった。体調を崩したのかしら。理由を考えて、一瞬で赤面した。思い出したわ! 私、昨夜……ヘンリック様と……。

「おとちゃ、ま……だっこ」

私が起きてこないので、レオンはヘンリック様に強請った。遠慮がなくなったのはいいことだけど、少し寂しいわね。動いたヘンリック様から、上掛けが落ちる。ゴツゴツではないが、鍛えた体が……っ、服を着ていない? もしかして……。

怠い腕でもそもそと向きを変え、上掛けの中を確認して丸くなった。悲鳴を上げたい気分よ。いろいろ思い出したし、足は力が入らない。それどころか、あちこちに愛された痕跡が見えた。子供の目には毒よね。隠すために脇で上掛けをしっかり固定した。

抱っこされたレオンはベッドの上で、にこにことご機嫌だ。昨夜のぐずりが嘘のよう。

「おかぁしゃま、ここ。あっち、も……」

指でぷすっと容赦なく指摘される。そこは多分、鬱血の痕だと思うが、なんて説明したらいいの?

「いたぃ?」

「い、いいえ」

喉も体のあちこちも痛いけれど、素直に肯定できない。おはようの挨拶はしたかしら? そんな場合じゃないわよね。混乱しながら上掛けを引き上げ、首まですっぽり隠した。両側を巻き込んで、ミイラみたいな姿になる。

「レオン、お母様は今日……動けない。だから休んでもらおう」

「どちて?」

どうして動けないの? 直球で尋ねるレオンに悪気はない。わかっているけれど……ダメ、もう恥ずかしくて死にそうよ。

「お父様が悪いんだ。運動させ過ぎてしまった」

「ちょっ、も……言わない、で」

隠して頂戴。首から上だけ覗かせて、亀より立派な籠城態勢で、私はヘンリック様を止めた。恥ずかしいし、まだそっちの教育は早過ぎるわ。

ここで救いの手が入った。隣の私室の扉がノックされる。首を伸ばして確認すれば、少し開いたままだった。マーサだと思うけれど、遠慮して見えない位置に立っているみたい。

「旦那様、恐れ入りますが……若様をこちらへ。お着替えの準備ができました」

私達の状況には触れず、ただレオンを引き取ると伝えた。ヘンリック様はすぐにレオンを抱っこし、ガウンを羽織って扉へ向かう。どうやって開けたのか、レオンは興奮気味に説明していた。頷いてから視線を合わせて屈み、ヘンリック様は言い聞かせる。

「今日はお母様は寝ているから、邪魔してはダメだ。義父上殿とご飯を食べてくれ。お父様はお母様の面倒を見るから……」

「ちち? だぁれ?」

難しい言葉に、私は咄嗟に声を上げた。

「レオン、じぃじ……よ」

「わかた!」

マーサが扉を閉める音が響き、私はがくりと崩れ落ちた。ぎしっとベッドが軋む。明るい部屋に影を作るヘンリック様が、私を上掛けごと抱きしめた。

「昨日は素敵だった。アマーリア、愛している」

私の夫は、こんな人だった?!