作品タイトル不明
393.じゃんけん大会やりたかったの
一人で複数の出品をしてくれた人が多かったので、余った品を私が一括購入した。公爵夫人用の予算が余っているのよ。
この家に来た頃も思ったけれど、使いきれないの。宝石は特に要らないし、そもそも用意されていた。お茶会や夜会も積極的に参加しないから、使う機会がない。ドレスはお揃いを作る際、ヘンリック様が別予算で支払ってしまったし。
別邸への療養やお祭りで何かを購入しても、それほどの金額にならなかった。ガラスボタンへの出資だって、ケンプフェルト公爵家で出したの。屋敷内にいればお金を使う機会がないわ。商人を呼びつけて「ここからここまで全部」をやってみたいと憧れたのは、幼い頃の話。現実に可能な状況では、逆に怖くてできないわ。
結局、私の予算から支払ったのは、わずかな買い物とお父様への授業料くらいね。
「いいのか?」
「ええ。残った予算ですもの」
またヘンリック様が払うと言い出す前に、フランクに合図を送った。すべて買い上げた後、皆で分け合うつもりなの。ただ、せっかくだから遊びの要素も入れたいわ。
「じゃんけんという遊びをしましょう」
「じゃん、けん?」
フランクも不思議そうにしたから、この世界にじゃんけんがないのは知っているわ。グー、チョキ、パーの形とルールを覚えてもらう。抱っこしたレオンの手と戦って、勝った人が物を追加で得られる仕組みよ。
もらう方も、じゃんけんする楽しみも、同時に味わってほしい。屋敷の女主人として、命令でしてでも決行するわよ! 気合を入れたけれど、すぐに許可が出たわ。
ヘンリック様もじゃんけんをする側に回る。よく見えるように、階段に並んでもらった。私達が下で、用意された踏み台に乗る。階段に並ぶ姿は、写真撮影のシーンを思い出す。
「レオン。せーの! の合図で、好きな形を出してね」
「うん」
ぐっと拳を握りしめて頷くけれど、いきなりグーかしら。それもいいわね。
「せーの!」
「えいっ!」
レオン、そこは出した手の形を叫んでほしかったわ。苦笑いしながら確認したら、出ていたのはパー。
「チョキの人だけ残って。負けた人は手を下げて頂戴」
さすが公爵家の使用人ね、ズルをする人はいない。真っ先に負けたユリアンが肩を落とす。オイゲンは得意げにチョキを掲げ、ユリアーナも残っていた。お父様とヘンリック様はパー、エルヴィンはグーだった。パーは「あいこ」だけれど、今回はなし。負けと同じよ。
残った数が思ったより少なくて、どうやら出しやすいグーとパーに集中したみたい。チョキの人全員に品物を選んでもらった。残った品数は二十一、もう一度じゃんけんするも、今度は十人残る。レオンの手はグーだった。
毎回違うのを出して偉いと褒めたら、次の回は大多数がグーを選択した。レオンがチョキを出すと思ったのね。でも予想が外れて、レオンはパーの手を揺らす。これ、楽しいわ。
最後の人がぴたりと合わず、残った焼き菓子はレオンがもらうことにした。これ、少し焦げてるわね。