軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

391.夫の意外な出品物

このような状況は許されない。固辞する一番手は、まさかのフランクだった。くじの紙を開いた瞬間、彼の血の気が引いたので焦ったわ。体調不良じゃなくて安心したけれど、いいじゃないの。くじは天の運よ。

引く前に、ヘンリック様が一番ではなかったんだから、別の人が一番を引くのは必然だわ。ヘンリック様の説得と私の後押しで、彼は先頭を切って歩き出した。続くのは洗濯係の下女、恐縮しきりだけど気にしないでね。

意外な引きの強さを見せたのが、庭師のハンス。三番手で歩き出し、侍女や侍従が続いた。その間で六番を譲ったオイゲンが入り、十一番のヘンリック様はレオンと手を繋いだ。元気に手を振るレオンへ、見送りの私が手を振りかえす。手元にあるのは交換した二十番、まだ先ね。

迷いながら進むけれど、さまざまな品を見ることが出来る。もう札がなくて買われていても、楽しめるはずよ。そのために品物を手にして決済を止めたんだもの。

走って戻るレオンと手を繋ぎ、ヘンリック様に行ってきますと挨拶をした。レオンは興奮してあれこれネタバラシ。あっちの刺繍が綺麗だったとか、こっちの鏡がキラキラしてたとか。それを案内代わりに頷いて、たくさんの手仕事を眺めた。素敵な作品ばかりだわ。

もちろんレオンの絵も見つけて、残った札をすぐ確保したわ。気を遣った侍女達が残してくれたのね。感謝しながら会計の部屋に入る。一番手だったフランクが、済ました顔で会計係をしていた。横に置いてあるのは、ガラスボタン二つ。

彼はあれを選んだのね。黒と銀のマーブル模様は、きっと似合うわ。きっちり決済して、レオンの絵は私の購入品となった。ところで、ヘンリック様は何か出品したのかしら。

仲良く歩きながら、ヘンリック様の隣へ戻る。手にした何かを眺めていたけれど、私達に気づいて笑みを浮かべた。すごく優しそうな雰囲気で、以前より素敵になったわ。

「ヘンリック様は、何か出品されましたの?」

参加がぎりぎりだったから、間に合わなかったかも。質問してから気づいて、失敗したわと眉尻を下げる。責めたように聞こえたら……そんな私に、ヘンリック様は満面の笑みで胸を張った。

「先触れを出した際、運ばせた。あれだ」

指差した先で、ちょうど侍従の一人が手に取っている。小さな瓶のようだけれど……。

「瓶の中身は蜂蜜だ」

蜂蜜……きょとんとした私に、ベルントが教えてくれた。台風の影響か。王宮の林から飛ばされた蜂の巣が、ひと騒動起こしたらしい。数人が刺されたので、大急ぎで兵士が蜂を駆除した。せっかく大きな巣なのだから、蜂蜜を採ろうとして……数人が刺された。

まさか? 上目遣いに確認すると、すっと左腕を捲る。そこに赤く腫れた痕跡を見つけ、苦笑いが浮かんだ。

「俺の労働の一部だ。出品の権利はあるだろう?」

片目を瞑って悪戯っ子のように笑う。あなたにそんな一面があるなんて、知らなかった。