作品タイトル不明
390.私服で盛装、お祭りだもの
お父様達はそれぞれに、お気に入りの服を選んでいた。双子は別邸に行った時購入したお揃いコーデ、エルヴィンは紺色の上下、お父様は濃茶の品がいいスーツよ。共通しているのは、ガラスボタンね。
購入時についていたボタンを外し、付け替えてあった。キラキラと光を放ち、目を引くボタンに使用人達も興味津々だ。安心してほしい、今日はガラスボタンを山ほど持ってきてもらったから。公爵家の事業として、立派に投資した分が回収できそう。
オイゲンは自前で濃灰色のスーツに、水色のシャツ。ガラスボタンは手配できていないと思ったのに、色合わせして青いボタンを二つ。カフスの代わりにシャツに使った。もしかして、ユリアーナがカルラと選んだのかも。
侍女や侍従を含め、ほとんどは私服で集まった。フランクやイルゼに伝えておいたの。だってお祭りなのに、制服は堅苦しいわ。個人として楽しんでほしい。
「おかえりなさいませ、ヘンリック様」
「おとちゃま!」
皆も口々に挨拶する中、馬車ではなく馬から降りたヘンリック様は、小走りで近づき……触れる手前で止まった。
「汗を流して着替えてから、挨拶させてくれ」
「あ、はい」
言葉を交わすのに、どうして汗を流して着替えるのかしら? 首を傾げるが、本人の希望が優先だ。どちらにしろ、用意した衣装に着替えてもらいたいし。見送ったが、驚く早さで着替えてきた。まだお茶が冷める前よ?
「待たせた。ただいま戻った……アマーリア」
両手を広げるから、立ち上がって応じる。なるほど、ハグがしたかったのね。微笑んで飛び込むと、頬や額にキスをもらう。驚いて固まる私の足元で、レオンがぴょんぴょん跳ねた。
「おとちゃま、ぼくも!!」
「ああ、もちろんだ。おいで、レオン」
レオンの頬にもキスをする様子を見て、ほっとするような……ちょっと胸が痛むような。
「お義兄様ったら、あとちょっとなのに」
「いや、義兄様は頑張った方だろ」
双子のヒソヒソ話で、はっとする。意味は考えたくないわ。
「では、くじ引きをしましょう」
引く順番は公爵家、オイゲン、伯爵家……使用人達だ。ここはフランクが譲らなかった。オイゲンは侯爵家の人だし、客人だから私達の後らしいわ。ここで喧嘩すると台無しだから、今度は私が譲った。
「あら、六番手だわ。ヘンリック様は?」
「十一番だな」
意外と若い番号を引いてしまったわね。オイゲンは二十番だったので、私と交換した。ちなみにレオンは私と一緒に回るので、代わりに引いてもらったの。機嫌よくオイゲンに譲ってくれたわ。
お父様が四十五、エルヴィンが三十二、双子は十八と六十九。かなりバラけたわ。使用人達も引き始め、一喜一憂する。それも楽しみの一つだった。
こんなお祭りは私もヘンリック様も、もちろんレオンも初めて。楽しまなくちゃ! 順番札を持って並び、待つのも嬉しくなるわね。