作品タイトル不明
389.お祭り当日、間に合いそうね
休憩時間や睡眠時間も削って、皆が揃えた商品はとても立派だった。編み物の得意な侍女が、間に一日休みが入ったこともあり、手袋二つとセーター、マフラーも仕上げたの。ちなみに二枚目のマフラーは編んでいる最中で、ぎりぎり間に合うかどうか。
交代制の休みを許可したので、前日か前々日に必ず休めたはずよ。馬番のおじさんは、意外なものを持ち込んだわ。馬の毛を使ったブラシ! 定期的に梳いて長さを整えるらしい。毛は廃棄せず、彼らの冬の収入源になるんですって。
馬の毛は適度にしなやかだから、化粧筆とかいいわよね。そう呟いたら、来年はそれにすると気合いが入っていた。そうね、毎年の恒例にしたら楽しそう。
普段は使用しない二階の一部の部屋と廊下に、商品を並べた。歩きながら気に入った商品の前にある札を手に取り、奥の部屋で購入する仕組みよ。ちなみに、歩く順番はくじ引き。フランクやイルゼは序列が乱れると反対したけれど、私は一年に一度の特別な日だからと押し切った。
ここでくじ引きの順位が高いからって、威張るような使用人はいないでしょう? そう言われたら、フランク達は頷けない。頷けば許可するのと同じ、拒めば不心得者が紛れていると言うようなもの。卑怯な聞き方をしたのは認めるわ。
「奥様、旦那様がお帰りです」
「あら。間に合ったのね。よかった」
昨夜、単騎の使者による手紙が届いた。朝までに仕事を終わらせて合流する、短い手紙の文字はやや崩れている。無理をさせてしまうけれど、参加してほしかったの。
「やた! おとちゃま?」
「ええ、お父様が帰ってくるわ。お出迎えしましょうね」
今日のレオンは薄ピンクのシャツに、青い半ズボン。サスペンダーの色は赤線が入った黒よ。二人でお揃い衣装の部屋で選んだの。だから私も同じ色合い。青いワンピースに薄ピンクのスカーフをベルトにして、七分袖の部分は透ける薄ピンクよ。黒に赤いラインの入ったリボンで髪を纏めた。
ヘンリック様にも用意してあるの。青いシャツに黒いズボン、腰のベルトに赤を差し色にして、ピンクの薄布をベルトの上に重ねる予定だった。男性の衣装は、女性のものより装飾が少なくて工夫が必要よね。
カルラお手製のガラスボタンを、付け替えてもらった。忙しい中だけど、イルゼが慣れた手つきでこなしてくれて助かったわ。私はワンピースの正面部分に飾りボタンとして追加したわ。
レオンはカフスより、普通のボタンがお気に入り。自分で嵌められると大喜びだった。
「待たせたか?」
「いえ。これからです……あら」
お父様達も、ガラスボタンに付け替えたの? 誰が……って、ユリアーナよね。目の下に少しクマがあるわ。寝不足は美容の敵よ、若いからって過信したらダメ。くすくすと笑いながら指で触れると、慌てて手鏡で確認し始めた。
ああ、馬車が到着しちゃう。急いで玄関に向かわなくちゃ。