軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

385.一日増えた休日をゆっくりと

お休みが一日伸びたので、ヘンリック様はゆっくり過ごした。街はまだ騒々しいし、災害の直後に遊びに行くのは迷惑よね。領地の書類も確認し終えたのを知っているから、フランクに頼んで隠してもらった。

「書類が……」

「全部、片付けました。処理が終わって、フランクのお墨付きですもの。それとも……私の処理では不安ですか?」

「いや、そんなことはない!」

そう言ってくれると思ったわ。領地には義父のヨーナス様もいる。現地の管理人が気を利かせ、事前に避難させてくれた。ケガもなく、元気に騒いでいるらしい。

「ゆっくり過ごしましょう」

レオンと遊んでもいい、他の家族と話をしてもいい。仕事から離れて、のんびりした時間を楽しんでほしいの。庭が綺麗な状態なら、外で食事も良かったけれど……あの有り様では無理ね。

片付け仕事に忙しい皆の邪魔をするのも気が引ける。レオンはご機嫌で、絨毯に胡座をかいたヘンリック様の膝に座った。すっぽり嵌まる形が気に入ったようで、鼻歌が始まる。上がったり下がったり、独特な音階だけど……元歌は不明ね。また創作かしら。

「あのね、ぼく……これ、つくっちゃの」

手のひらに乗る大きさの、動物? 粘土で作ってあるから、きっと母猫アイだわ。目配せするも、伝わったかしら? ヘンリック様はレオンに顔を寄せ、じっくりと手のひらの猫を眺めた。

「これは猫か」

「うん!」

嬉しそうに笑うレオンは、自分から話し始めた。

「おかぁ、しゃん、あい! かぁいいの」

ここが白くて、ここが黒、尻尾の近くに茶色があって。そんな説明を一生懸命にする。レオンの一言に「そうか」「なるほど」と相槌を打つヘンリック様は、微笑みを絶やさなかった。

幸せな親子の姿に、口元を緩める。巨大台風の被害があって、人々が大変な時にこんなこと言っていいのか。それでも――幸せだわ。

「おかぁしゃま」

呼ばれて距離を詰めれば、自慢げに私にも猫を見せてくれた。硬い土を侍従に解してもらった粘土は、茶色い塊だ。それを工夫して、表面に模様をつけていた。布を押し付けたの? 賢いわね。

褒めてから、後で服のチェックをしなくては……と思う。でも洗濯は専門の下女がいるんだけど……やっぱり気になっちゃうわ。遠慮したのか、実家の家族は離れの片付けを理由に帰った。実際のところ、帰ってもやることはないはずよ。使用人達が手配してくれたもの。

「アマーリア、その……隣にいてくれないか」

「はい」

照れるけれど、隣に座り……迷って寄りかかった。肩はがっちりしていて、頼り甲斐がある。触れている部分から、じわじわと体温が混じっていく。形容し難い不思議な感覚で、胸がうずうずした。

よく幼子が突然叫ぶ理由がわかるわ。きっとこんな感じね。