作品タイトル不明
381.猫の世話も楽しめる
レオンの絵は、団欒の間である絨毯の部屋に飾られた。玄関ホールでもいいと思ったけれど、肖像画を発注したんですって。台風騒動が一段落したら、画家が巨大キャンバスを持って現れるみたい。
基本的に玄関ホールに飾る肖像画は、等身大に近い大きさが好まれる。これは貴族の財力や見栄、歴史を象徴するから仕方ないわね。レオンの絵の大きさは、賞状くらいのサイズだった。確かに大きさが足りないわ。
寝室という提案もあったが、寝る時しか入らない部屋だ。薄暗い時間になってから入り、朝はすぐに出てしまう。絵をゆっくり鑑賞する時間がないのよ。残念だけど、却下ね。それに、伯爵家の家族や使用人も描かれているのに、見られないなんて勿体無いわ。
猫の世話が回ってきたので、午前中はヘンリック様も一緒に猫部屋に向かった。今日は私が餌当番で、レオンはお掃除係よ。
「あい、おいで」
呼ばれた母猫アイは、むっとした表情になる。猫の表情は変化しないと思っていたのに、すごく表情豊かだった。お前が来い、そんな態度でそっぽを向いた。レオンは気にせず、とてとてと歩いて近づく。
注意されなくても、レオンはもう理解している。手前で腰を下ろし、そっと手を差し出した。手のひらをくんくん嗅いだアイが、いいよと体を寄せる。お礼を言いながら、レオンはアイの背中を撫でた。
「ヘンリック様、そっちの白い子を捕まえて」
遊びたい盛りの子猫が走り回り、頭上から襲ってくる。身軽に棚を駆け上がり、飛びつくのがお気に入りのようだった。侍女達に「お気をつけて」と注意されていたが、サビーネの襲撃を喰らってしまう。頭を庇ったら、背中を駆け降りていった。
「びっくりしたわ」
「シロを捕まえたぞ」
ヘンリック様は名前を覚えたようで、得意げに子猫を掲げて見せる。その足元で、ミアがクライミングを開始していた。
「ヘンリック様、足元!」
「爪が刺さる」
きゃあきゃあ騒ぎながら世話を終わらせる。掃除は事実上、トイレの確認くらいなの。部屋は定期的に侍女が掃除していた。遅れて駆け込んだユリアーナは、猫のブラッシングを始める。ご機嫌で喉を鳴らすサビーネを見て、シロやミアが騒ぎ出した。
ヘンリック様が下ろしたシロは、真っ直ぐにブラシへ向かう。
「勝てないな」
「ええ、ご飯係も勝てないのよ」
決められた時間に、きちっと食事がもらえる。猫達にしたら、大急ぎで駆け寄る必要性を感じないみたい。もう野良猫は無理ね。野性のほとんどが消えて、家猫になっているもの。
「綺麗にできた」
いつの間にやら、ヘンリック様は猫のトイレ砂を整えていた。平らにならした砂に満足するも、すぐにミアが飛び込む。三毛の子猫は勢いよく砂を掻き回し、全然関係ないところで用を足した。
「ふふっ」
呆然とするヘンリック様の姿に、申し訳ないけれど笑ってしまったわ。