作品タイトル不明
377.立派な額に入った「びじゃぁ」
「これはレオンの描いた絵ですね。見てご覧なさい、レオン。お父様が飾ってくれたわ」
「ほんちょ? どれ?」
机に届かないレオンが駆け寄り、抱き上げて見せてあげた。興奮して「きゃぁああ!」と叫ぶレオンが、じたばたと暴れる。この頃、力が強くなった気がするわ。落とさないようしっかり抱えていると、ヘンリック様が手を伸ばした。
「机に乗って見ればいい、ほら」
手際よく靴を脱がせ、机の上に座らせた。ずりずりと擦って移動し、レオンは絵の入っている小さな額を眺める。木製の枠は、元々表彰の証書が入っていたらしい。この枠、ちょうどいい大きさね。私も取り寄せてもらいましょう。
「……ここにも、あるんだ」
そう言って、ヘンリック様は一番下の引き出しを開いた。何枚も出てきたのは、額に入ったレオンの絵。に紛れて、なぜか私の絵も! フランクが「しまっておきましょう」と運んでいって、そのまま忘れていた。
びじゃぁと鳴きそうな猫は、額に飾られ得意げに見える。恥ずかしいけれど、大切にしてくれているのは伝わった。
「交換するために、毎朝選ぶのが楽しみだ」
驚いた顔をした私へのフォローなのか。ベルントが詳しい事情を教えてくれた。フランクから絵の存在を聞いたヘンリック様は、今回の泊まり込みが始まる際に着替えと一緒に梱包させた。
以前の災害の記憶から、今回はその時以上に忙しくなると判断したんですって。家族と離れれば寂しい。その気持ちを紛らせようと、私やレオンを感じられる絵を選んでくれたなら……。
「怒っているか?」
勝手に持ってきてしまった。肩を落として上目遣いに私を見る姿は、悪戯がバレた子供みたい。微笑ましくなって、笑顔になった。
「いいえ。少しでも気持ちの慰めになるなら、嬉しいですわ」
「とても役立っている! これがないと書類を放棄しそうだ」
それは大変。くすくすと笑って、レオンに提案した。
「お屋敷に帰ったら、お父様へ手紙を書きましょうか。絵をいっぱい描いて、頑張ってと伝えるの」
「どちて?」
いま目の前にいるのに、どうして屋敷で描くの? 子供のまっすぐな疑問に、丁寧に返す。
「お父様は一緒に帰るわ。でも二つ寝たら、またお仕事に行くのよ。その時に寂しくないように、たくさん送りましょうね」
「あい!」
わかった! 手を挙げて、レオンは了承を示す。そのまま転がりそうになり、ベルントが後ろから支えた。
「あんと」
転ばずに済んだレオンは、きちんとベルントに礼を告げる。私が促さなくても、自主的によ? 賢くて可愛くて、最高の天使だわ。