軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

376.小さな騎士様の冒険譚

「俺の私室でお茶を飲もう。最近、ようやく人並みの睡眠時間が確保できるようになった。といっても数時間の差だが……定時業務に体が慣れたせいか、鈍っているようだ」

忙しかったと言いながらも、心配させないようフォローも入れる。定時の頃に比べれば睡眠は減ったが、過労じゃない。体が楽に慣れただけなんて……ふふっ、可愛い表現だわ。絡めた腕に体を寄せれば、ヘンリック様がびくっと揺れた。

不躾だったかしら。そういうこと、気にする様子は今までなかったのに? 不思議に思った私に、リリーが口パクで何かを知らせてくる。う、で……じゃないのね? む、ね……胸! 通じたことにほっとした。

胸がどうしたのか。服に汚れでもあったらまずい。視線を下げれば、ヘンリック様の腕に胸が……押し当てられていた。さっき、距離を詰めたから? どうしよう、離れた方が……でもいきなり離れたら変かも。このままにはできないし。

焦る私の様子に、ベルントが助けの手を差し伸べた。

「若様、お屋敷でのご活躍を教えていただけませんか?」

「ぼく? あのね」

拙い言葉で伝えきれず、両手を振り回して説明を始めた。これがチャンスと、私はそっと腕を緩める。レオンは降りると言い出し、ベルントに細かなことまで説明しながら歩いた。当然両手は説明に使うので、手を繋ぐこともしない。

「よるは、ぼくが、おかぁしゃまと、いっちょしたの」

きちんと守ったんだよ。得意げに言い終えたところで、ベルントがたくさん褒めた。私も重ねて「心強かったわ、レオン」と黒髪を撫でる。さっと手を伸ばし、右手をヘンリック様と繋いだレオンは、当たり前のように私の手も握った。

父親と母親、両方と手を繋ぐことは、今のレオンの日常と同じ。緊張しないし、拒まれるなんて想像もしない。示された信頼と愛情に、口元が緩んだ。

「今日の装いも素敵だ。アマーリア、来てくれてありがとう」

「い、いえ。ヘンリック様こそお疲れ様でした。一度、帰れるといいのですけれど」

直接会えなかった家族や使用人も安心すると思うの。ぽろりと溢れた本音に、ヘンリック様はにやりと笑った。何か隠しているの?

「今日の午後と明日いっぱい、休みをもらった。明後日から復帰するが、今日一緒に帰宅する予定だ」

「まぁ! よかった。心配していましたの」

嬉しくて少し大きな声を出した。我に返って恥ずかしくなり、俯く。

「喜んでくれてよかった。差し入れは一緒に食べて、荷物は私室へ運ばせよう」

ベルントが侍従に指示を出す。その間に、ヘンリック様の私室に到着した。通された部屋の変化に驚く。花瓶に花が生けられ、絵画も飾られていた。机の上にも写真立て? ちらりと覗いたら、レオンの描いた絵だった。親バカは私だけじゃないみたいね。