軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

355.静かな屋敷で一日の始まり

起きたら、いつもより少し早かった。寝坊をしないよう気合いを入れたお陰かしら。私が動いたことで、ヘンリック様も目が覚めてしまったみたい。

「朝食を作りに行ってきます。レオンが起きたら、一緒に着替えて身繕いを……」

小声でお願いしている間に、レオンが起きてきた。もぞもぞしたあと、きゅっと指先を握る。

「おはよ……ぉ……」

まだ半分寝ているみたいね。ふっくらした頬を撫でて、目覚めを促す。ぱちぱちと何度か瞬いた天使は、ほわりと笑った。すごく幸せそうな顔で、見ているこちらが泣きそうよ。

「おはよう、レオン。お母様はご飯を作ってくるわ。お父様とお着替えできる?」

「できぅ」

こくんと頷いたレオンをヘンリック様に預ける。私は隣室で髪をさっと梳いて結び、ワンピースに着替えて部屋を出た。化粧は最後にしましょう。薄化粧程度でいいし、なんならスッピンでもいいかも。イルゼやリリーがいたら叱られちゃうわ。

いつもなら使用人とすれ違う廊下は、静かだった。侍女や侍従などの上級使用人は、三階部分となる屋根裏に部屋を持つ。洗濯や料理に関わる使用人は、逆に地下室が与えられていた。といっても、一階部分が持ち上がっているため、半地下よ。

庭師や馬の世話をする者は、外に小屋を与えられるため屋敷に立ち入らない。やや大きめの町と同程度の使用人が、この屋敷周辺に散らばっていた。彼らも皆、自由に過ごしているだろう。

厨房に入ると、数人が慌てて一礼した。仕事ではなく、賄いを作っていると聞いて安心する。そうよね、自分の食べる分は休みでも作るから。隣でささっと簡単な料理を作った。

野菜と海老の入ったスープを煮込み始めてすぐ、ユリアーナが飛び込んでくる。挨拶を交わすと、髪を結びながら謝罪された。

「ごめんなさい、お姉様。寝過ごしちゃった」

「あら、いいのよ。そちらに持っていこうと思ったのだけれど、まだ作っている途中なの」

まだ九歳になったばかりの伯爵令嬢が、手伝うと腕まくりをする。驚いた顔をする使用人達の前で、手際よく包丁を扱った。ソーセージは茹でるので、サラダに入れる野菜を切ってもらう。トマトやきゅうりがスライスされ、綺麗に並べられた。

「うわっ、俺がビケかよ」

「変なスラング使わないの! おはよう、ユリアン」

エルヴィンはオイゲンの身支度を手伝っていると聞いて、ハッとした。一般的に貴族は自分で身支度を整えるなんて、無理なのよ。

「ユリアン、ここの手伝いはいいから、ヘンリック様達の支度を手伝ってあげて」

「了解!」

元気よく駆け上がる背中を見送り、ユリアーナと料理を仕上げていく。パンは炙ったチーズを載せたものと、何もつけないものを用意した。デザートは果物でいいわよね。

大皿料理に慣れてもらっておいて、本当によかったわ。コース料理を作るのは無理だもの。手際よく卵を炒め、オムレツとスクランブルエッグの間みたいな料理を仕上げた。

あとは運んで、皆で頂くだけね。