作品タイトル不明
354.楽しんだらお礼が必要ね
お膝に座ってお菓子を食べ、並んで手を繋ぎ踊る。レオンが望むのは、ささやかな触れ合いばかり。遊んでいても振り返り、私がいることを確認して笑うのよ。こんなに可愛い子、愛さずにいられない。
「おかぁしゃま、あーん」
手に載せて運んだのは、小さな焼き菓子だった。口を開ければ、中に入れてくれる。苺の赤いジャムを飾ったお菓子は、甘くて美味しかった。そう伝えれば、レオンは嬉しそうに笑う。
「ユリアン、踊ってあげてもいいわよ」
「それはこっちのセリフだっての」
オイゲンのピアノに合わせ、双子が踊り始める。習ったばかりのワルツのステップに気づき、オイゲンが曲を変更した。ヘンリック様に誘われるが、レオンがしっかりと手を握って離さない。先ほどの退室が不安を煽ってしまったのね。
「レオン、一緒に踊りましょうか」
「うん」
あら、もしかして私達と踊りたかっただけ? 三人で輪になる。こうして手を繋いで立つと、レオンの成長がわかるわ。もう三歳なのよね。大人のフリをしたい幼子を、ヘンリック様が抱き上げた。
「やぁ!」
「顔の見える距離で踊ろう。ほら、お父様とお母様が一緒だ」
「……ほんとら」
ヘンリック様は腕に座らせる形でレオンを支え、倒れないよう私も腕を伸ばした。チークダンスのように距離を詰め、中央に挟まったレオンは体を揺らして楽しむ。ヘンリック様のリードでくるくると回り、最後にレオンを掲げて終わった。
使用人の拍手に、レオンはすっかりご機嫌。笑顔で手を振り、床に下ろしても興奮状態だった。エルヴィンが誘って、お父様やイルゼ、フランクも入って。輪になって踊り始めた。ベルントはあれこれと指示を出し、料理を入れ替えている。
ちらりと目配せすれば、夫も意味ありげな顔で頷いた。そっと近づき、私とヘンリック様でベルントを挟む。それぞれに腕を掴んで、ダンスの輪に飛び込んだ。間に入れてもらい、輪が大きくなる。
リリーやマーサも参加し、最後はほとんど全員が三重の輪を作って踊った。食べたお料理はもちろん美味しくて、夕飯まで広間で頂く。賑やかな広間は、早めにお開きとなった。片付けがあるから、あまり遅くまで騒いでいると使用人が休めないわ。
「これは女主人としての命令よ。明日は全員お休み! 私達は、自分の世話を自分で行います。絶対に手伝わず、ゆっくり休むの。破ったら罰がありますからね」
驚いた顔の家令に、追加の命令を出した。全員に、お小遣いをあげてほしいの。三日分の給料でどうかしら。恐縮する彼に命令だと言い聞かせ、手配を任せた。
明日の朝食は何を作ろうかしら。それに、お寝坊しないように気をつけないと。