軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

349.可愛い天使と夫で両手に花

ヘンリック様の手の温もりを感じる。続けて、金鎖のひんやりした感触にびくりと揺れた。

「冷たかったか? すまない」

「い、いいえ。大丈夫ですわ」

正直、自分でもどちらに驚いたのか。判断できないの。ヘンリック様の指が離れると、首筋にずっしりと装飾品の重さがかかった。肩や肩甲骨部分にも、レース編みのような金鎖が広がる。

「お借りします」

傷つけずにお返ししなくては……と呟いた途端、ヘンリック様の指が頬に触れた。

「これは君のものだ、アマーリア。傷つけても汚しても構わない」

え? こんなに豪華な首飾り、が? 家宝だと思うけれど。困惑顔でヘンリック様を見上げ、斜め後ろに控えるフランクにも視線を向ける。にっこりと笑顔で頷かれてしまい、ひとまず受け取ることにした。

「ありがとうございます。大切にいたします」

この場で固辞したら、用意してくれた夫に恥をかかせてしまうわ。夜、きちんとお話しして返せばいい。

「おかぁしゃま、ぼく……かっくい?」

スカートの刺繍部分を指で摘まみ、レオンがにっこりと笑う。僕もカッコいいでしょう! 得意げに胸を反らす天使は、今日も可愛かった。でも褒め言葉は「カッコいい」を求めているのよね。

「あら、どちらの騎士様かと思ったわ。立派でカッコいいわよ、レオン」

皆とお揃いの黒い半ズボンと薄いピンクのシャツ。半ズボンはサスペンダーが付いているけれど、垂らしていた。これもデザインのうちかしら。首元には大きなリボンが結ばれ、色は紫で紋章が金糸で刺繍されていた。

大きな紋章ではなく、リボンの両端に細かく複数の刺繍が施されている。大きな刺繍より手間がかかる上、刺繍の腕も試される。作った方も誇らしかったでしょうね。ピンクのシャツの上に、丈の短いベストを着用し、艶のある黒が映える。

「おてて、どうじょ」

騎士様のつもりで、エスコートの手が差し出される。しっかりと繋いだ。反対の腕をヘンリック様に絡める。

「姉上、今日はいったい……」

「また王宮かしら」

着替えがお揃いなので、王宮へのお呼ばれだと思ったらしい。薄化粧を施した桃色の唇で、ユリアーナが予想を口にした。残念だけど、ハズレよ。

話したいけれど、ギリギリまで内緒。レオンは一緒の衣装が嬉しくて、笑顔を振りまいた。事情を知る上級使用人が誘導する廊下で、すれ違う人すべてに手を振る。この笑顔が、さらに花開くのが楽しみだわ。

「こちらでございます」

広間の扉を開けた侍女長イルゼが、優雅に一礼した。両開きの扉の反対側を、リリーが開く。シャンデリアの蝋燭が揺れ、奥に見える大きな木は白い花が咲いていた。その手前に積まれた化粧箱の山、シャンデリアや壁、木を繋ぐカラフルな紙テープ。

風船があったら完璧だったわね。無い物強請りをしながら、私は驚く皆の顔に頬を緩めた。