作品タイトル不明
348.特別な日のお揃いよ
「姉上これは……お揃い?」
文句を言いかけたエルヴィンが、服の意匠に気づいて首を傾げる。一目でわかるくらい、デザインを寄せたの。私がケンプフェルト公爵家に嫁いだ後、シュミット伯爵家の家族と揃えることはなかった。
揃えるなら、まずレオンやヘンリック様よ。小物の色くらいなら寄せるけれど、誰もがお揃いと判断する意匠は避けてきたの。でも、今回は別よ。全員が黒をベースにして、少しずつ変化させた正装だった。
「今日は特別だもの。素敵でしょう?」
微笑んで、エルヴィンの前で、くるりと回った。お父様達も顔を見せ、レオンとヘンリック様待ちだ。
お父様は黒の上下に、ライラック色のハンカチを飾る。シャツは白だけれど、クラバットピンに伯爵家の紋章を入れた。同じような黒の上下だけれど、エルヴィンは襟の形が違う。水色のハンカチと、クラバットに銀糸で紋章を刺繍した。
ユリアンはシャツまで黒、襟や袖に白いラインを入れ、ミント色のハンカチを差す。クラバットの白に薄紫で家紋を入れた。オイゲンも黒だけれど、白いシャツの裾や襟を装飾して、黒の上に重ねる。外へシャツを出すデザインに、戸惑っていた。イメージカラーはオレンジよ。
ピンクのレースを重ねた黒のドレスは、ユリアーナ。ひらひらと裾が広がる愛らしい形で、肩を出すプリンセスドレスだ。ただ昼間の集まりなので、ボレロも作って貰った。妖精みたいだわ。
「ユリアーナが化けた」
「失礼ね、ユリアン」
ムッとした口調でユリアーナが言い返す。隣で「可愛いな」とオイゲンが呟く。頬が赤いわね。エルヴィンは素直に「綺麗で似合ってるよ」と褒めていた。八方美人になりそうな子ね。
私は黒に金の刺繍が入ったスレンダーラインにした。体に沿うから恥ずかしいと伝えたけれど、細いので是非にと勧められたの。金糸のショールを腰から掛けた。レース編みなので黒が透けて、とても綺麗。下から履いて、肩紐をかけたら後ろを留めてもらうだけ。
「待たせた」
ようやく出てきたヘンリック様は髪型が違った。夜会のように前髪をかき上げ、凛々しく見える。黒い服は濃いグレーの切り替えが入り、マリンブルーのハンカチが覗く。水色のシャツの襟も同じ色ね。金の刺繍が入り、ネクタイに近い艶のある布に紋章のカメオが飾られていた。
見惚れてしまい、ヘンリック様の褒め言葉で我に返った。
「とても綺麗だ、アマーリア。揃いで仕立てさせた甲斐があった。これも受け取ってくれるか?」
フランクが斜め後ろから、さっと宝石箱を差し出す。開いたケースの中には、美しいネックレスが入っていた。レース編みのように繊細な金鎖が輝き、中央のサファイアを際立たせる。よく見れば、台座にケンプフェルト公爵家の紋章が刻まれていた。
公爵家の妻ならば当然なのに、気後れしてしまう。私に? そんな思いで首を傾げれば、ヘンリック様が手に取ったネックレスを私に付けようとする。緊張しながら身を任せた。