作品タイトル不明
347.物足りない昼食と早着替え
ヘンリック様は休みを取り、午前中は勉強部屋で過ごした。積み木で遊ぶレオンの隣に座って、一緒に積み重ねたり崩したり。笑いながら楽しい時間が過ぎていく。昼食は軽く、そう伝えておいた。足りないくらいの量が理想よ。
サンドウィッチのような、薄いパンに野菜やハムを挟んだものを食べる。ユリアンやエルヴィンは、明らかに足りないと顔に書いてあった。ユリアーナも不満そう。オイゲンは別のことに気を取られていた。人参ジュースよ。オレンジ果汁で割って蜂蜜を足したそれを、お代わりする。
弟妹は料理が物足りなくても、絶対に口に出して文句は言わない。貧乏伯爵家時代を過ごしたため、口に出しても悲しくなるだけと思っているでしょう。今は違うのだけれど、あの子達が何も言わなければ、レオンやオイゲンは我慢する。
部屋の中に待機するベルントに、連絡が入った。合図を確認し、私は皆に声をかける。
「食べたら、こちらへ来て」
いつもと違う指示に、レオンは首を傾げた。絵本を読んでもらって、お昼寝だと思ったのね。ヘンリック様を見上げ、何か納得した様子で頷いた。もしかして、お父様がいるから今日はいつもと違う。そう考えたのかしら。
「なぁに?」
一番最初に駆けつけ、勢いそのままに膝へ飛びつくレオン。さらさらの黒髪を撫でた。ご機嫌の猫みたいで、ゴロゴロと喉を鳴らしそう。
「では任せるわ。お願いね」
「「「はい、奥様」」」
室内にいた侍従達と、扉を開けて入ってきた侍女が連携して、決められた通りターゲットを捕獲する。きょとんとする弟妹とオイゲンが、勉強部屋から連れ出された。目の前の客間を使い、それぞれに着替えを渡される。
「ちょ! 姉上、これは?!」
「うわっ、なんだこれ」
「え? 着替えるの? この服、可愛い!」
それぞれの声が聞こえる中、オイゲンの叫び声が重なった。
「自分でできる、出来るからっ! ああぁ!」
……襲われた悲鳴みたいだわ。レオンは大人しく、ヘンリック様と移動になった。ふふっ、レオンの着替えに同行してねとお願いしておいたの。一緒に着替えてもらうわ。
「奥様もお急ぎください」
「ええ! 頼むわね」
今朝は髪を結ってもらった。手早く着替えるが、ドレスは夜会と同じ肩出しデザインだ。結った髪を崩さず着替えるためだった。背中の細かなボタンを留めている間に、髪留めを差し込む。化粧も変えるので、着替えて靴を履く間に済ませてもらった。
衣装替えを想定して朝の準備をしたので、手際のいいリリー達に任せる。マーサはレオンの着替えに向かった。支度が終わった人から、廊下に出される。すでにエルヴィンが立っていた。続いてユリアン、オイゲン。やっぱり男性陣の方が早いわね。