軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

333.外出先ではソース禁止

湿っぽくならないよう、努めて明るく振る舞った。笑顔を絶やさず、料理を並べて説明する。ヘンリック様は肉も魚も好き嫌いなく食べる。同じように強くなりたいと、レオンもパンに野菜をたくさん挟んだ。

我が家と違い、絨毯は靴で踏む。そのためベッドからシーツを剥いで、窓際に敷いた。お行儀悪いけれど、シーツは洗うものだから。あとで王宮の侍女に話して、新品と交換してもいい。並んで一緒に食べたかったの。

「おにわ、しゅごいね」

「ええ、綺麗ね」

景色が見えるので、レオンはご機嫌だった。開け放ったバルコニーの扉の縁に座り、足をバタバタと動かす。

パンにはバターを塗っただけ。用意されたサラダや肉、野菜を自分で挟んでいく。ソースは瓶からスプーンで垂らす形にした。鼻歌まじりのレオンは、汚す前に胸元に布をかけた。ナプキンに紐を縫い付けた、特製のエプロンよ。

口を開けた私はぱくりと齧りつく。ソースを少なめにして正解だったわ。ぽたぽたと垂れちゃいそう。そう思った目の前で、レオンの手にソースが伝った。自分で包みたいと言うので好きにさせたけれど、着替えが必要になりそう。

「あらあら、溢れてるわよ。レオン、ほら」

自分のパンを置いて、レオンの手を拭う。まだシャツに染みる前でよかった。袖をくるくると巻いて、肘まで露わにした。レオンは気にせず、また齧る。今度は垂れても袖の心配がいらないわよ。ふふっと笑って振り返ると、ヘンリック様が困惑した顔で固まっている。

「レオンとそっくり」

考えるより早く言葉が漏れる。だって、ヘンリック様の手首にも、ソースが垂れているんだもの。

「アマーリア」

「動かないで。すぐに袖を捲ります。角度を上げて、そう」

肘を上げるよう頼み、その間に袖を捲った。ついでに、ヘンリック様の胸元にも、ナプキンの角を押し込む。これで垂れても平気……自分の姿が窓に映って目に入り、顔が赤くなる。

ヘンリック様の背中側から反射した景色は、まるで私がヘンリック様にキスをしているみたい。赤くなった私がいそいそと戻る姿を、ヘンリック様は不思議そうに見送った。並んで座れば、少しだけ落ち着く。どうしましょう、意識しちゃったわ。

「助かった、ありがとう」

「いいえ」

明るい声で返したものの、どうしても顔を見られない。たぶんまだ赤いはず。皿の上に置いたパンを掴み、勢いよく噛みついた。垂れそうになって慌てれば、今度はヘンリック様がナプキンを差し出す。手を拭いて、お礼を告げた。

「その……たぶん、俺が何かして怒らせたと思うんだが」

何を言い出したの? きょとんとして見つめる先、ヘンリック様の眉尻が下がる。

「謝る機会をくれると助かる」

「あの、そういうわけでは……」

怒っていないし、ヘンリック様は悪くない。勝手に私が過剰反応しただけだもの。説明しようとした直後、レオンが声を上げた。

「おかぁ、しゃま! おてて」

え? やだ、今度は私の手が汚れてるわ。慌ててパンを皿に戻し、手を綺麗に拭った。外出先で食べる場合、ソースは禁止ね。