軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

326.二人はそっくりだわ

猫を譲ってくれた侍従の実家は、猫を飼っていなかった。倉庫に迷い込んだ親子を保護しただけ。前世で動物を飼っていた記憶がないので、私の知識もあまり役に立ちそうにない。

猫の飼い方、この世界で誰に聞けばいいのかしら。本は高額なので、たぶん、誰も発行していないと思うのよ。帰宅したヘンリック様に相談した。

「猫か、誰か飼った経験のある者がいないか、確認してくれ」

フランクに命じるヘンリック様を見て、そうよね……と気づいた。この屋敷や関わりのある業者は多い。その中に誰か、猫を飼った人がいるはずだわ。どうして気づかなかったのかしら。

少し落ち込むも、ヘンリック様の様子を見て思い直した。頼られたと嬉しそうにしているのだから、これでよかったのよ。ヘンリック様にお礼を言い、頼りになると付け足した。嬉しそうに笑う顔が、レオンとそっくりね。

「音楽の授業だが、俺だけ遅れてしまうな」

「休みの日にでも、皆で演奏しませんか。上手下手じゃなくて、楽しむためです」

「なるほど。ティール侯爵令息が木琴を弾くと聞いた。使用人の中に、演奏したい者がいれば、楽器を貸し出そう」

以前にも一度話が出たが、その後のドタバタで、曖昧になっていた。ヘンリック様が断言したことで、屋敷に眠る多くの楽器が新しい音を奏でるだろう。それはきっと、素敵な変化をもたらすわ。

食後の報告会で猫の話が出て、ヘンリック様は我慢できなくなったみたい。レオンと一緒に、こっそりと猫部屋へ向かった。カーテンを開けたままにした室内に、月光が降り注いでほんのり明るい。ガラス越しに、二人で顔を突き合わせてひそひそ話。

私がお風呂に入っていた間に、随分と楽しんだのね。見つかった二人はバツが悪そうにしながらも、下手な言い訳はしなかった。だから許してあげる。

「二人ともお風呂に入ってらっしゃい。先に寝室で待っているわ」

ガウンを羽織った私の横をすり抜け、二人は手を繋いで浴室へ向かう。毎日お風呂に入れるのは、贅沢なことよ。それでも前世の影響で、どうしても入りたくなっちゃうの。

体が冷える前に、寝室のベッドに潜り込んだ。レオンの好きな絵本を用意し、柔らかなクッションに寄りかかる。横になると寝てしまいそう。

「おかぁしゃま!」

元気に飛び込んだレオンを、タオル片手のマーサが追いかけてくる。寝着を着ているが、髪が濡れているわね。追いついたマーサが「若様! まだ濡れております」と叱りながら、手際よく乾かす。

「レオン、きちんと乾かさないと熱がでるぞ」

反対側の扉から入ってきたヘンリック様が叱るも、ご自身の髪が濡れているわ。

「ヘンリック様も、同じです。風邪を召されますよ」

手を伸ばして首元のタオルを奪い、丁寧に黒髪を乾かす。ベッドの端に腰掛けた夫の髪を拭いて、手で確認した。このくらいなら大丈夫そうね。

「ずりゅい」

レオンの不貞腐れた声が聞こえ、二人で振り返った。唇を尖らせた幼子に、思わず笑ってしまう。

「絵本を読むから、許して頂戴」

そう提案すると、黒髪の天使も笑顔になった。