軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

319.公爵家は楽器も持っていた

弦楽器担当のアルノー、打楽器が得意なヨハン、ビアンカは管楽器だけでなくピアノも弾きこなす。優秀な教師が揃ったところで、それぞれに教えを請うた。

オイゲンは木琴が好きらしいが、さすがに屋敷にはないかも。フランクに尋ねたところ、ほとんどの楽器は揃っているらしい。なんでも数代前の当主が演奏会好きで、一通り揃えたとか。運ぶための侍従をつれ、フランクが木琴を取りに行った。その間、オイゲンは待機だ。

お父様のオーボエは、渋い音を出している。私たち家族の中で、唯一音楽を習った人なのよね。シュミット伯爵家の財政が傾いてから、私を含めて楽器なんて手が出なかった。部屋の一部のようなハープを見上げて、うーんと考え込む。私が想像したハープと違うのよね。

「いかがなさいました? 公爵夫人」

見ているだけで触れようとしない私に、ビアンカが首を傾げた。

「ヘンリ……いえ、夫が買ってくれたのだけれど、想像と違ったの。もう少し小さくて、こんな感じに構えて、手元で弾く大きさと思っていたのよ」

膝に乗せて弾く形を示すと、ビアンカは納得したらしい。

「我々がムーンハープと呼ぶ、小型の楽器があります。そちらを探してみてはいかがですか」

そうね、色々な楽器があると聞いたから……ヘンリック様には悪いけれど、この大きさを弾けるようになるのは無理だと思う。マーサはレオンのシンバルに付き合っているので、リリーを手招きしてフランクに伝言を頼んだ。

ハープが届くまでの間、皆の様子を見守る。お父様は慣れた様子で曲を選んで吹いているし、エルヴィンはバイオリンの音階を丁寧に辿っていた。まだ指慣らしの段階みたい。苦戦しているのが、ユリアーナだ。久しぶりすぎて、吹き方を忘れたのか。音が出ていなかった。気づいたビアンカが動く。

ユリアンはマイペースだった。ゆったりした曲から始め、すでに数曲を奏でていた。私もピアノにすればよかったかしら。でも女神像が持つ竪琴に憧れたのよね。神々しい感じもするし、優雅で……正直、楽そうに見えたのよ。

思い出したように、レオンがシンバルを鳴らす。大きく打ち鳴らすが、ヨハンに教えてもらい、鳴らし方を変えながら試している。小さく振るわせたり、小太鼓のスティックに似た棒で叩いたり。スティックで叩くと、ドラムみたいね。

それぞれの音が自由に鳴り、室内はカオスな状況だ。それなのに、不思議と居心地がよかった。淡々と弾くユリアンのピアノをベースに、様々な楽器が寄り添ったり反発したりする。

「奥様、ムーンハープをお持ちしました。弦の調整はしておりません」

「わかったわ、ありがとう」

受け取って、弦を止める金具に触れたら……ぱちんと音がして弦が切れてしまった。驚いたけれど、ケガはない。ユリアンの指導をしていたヨハンが慌てて駆けつけ、すべての弦を確認してくれた。

「助かるわ」

すべての弦を交換し、調整を終えたハープに触れる。子猫より重いかしら。膝に乗せたハープの弦を、そっと指で弾いた。