軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

308.小さな騎士様は世話を焼きたい

ヘンリック様の宣言に、使用人は当然頷く。逆らう理由はないもの。でもお父様まで賛成するなんて。

「おか、しゃま! らめれしょ!!」

厳しい言い方で、唇を尖らせて怒るのはレオンだ。ベッドから降りてはいけないと、私を押し戻そうとする。困ったわね、苦笑して足をベッドの上へ戻した。

トイレに行きたいんだけれど……視線で伝えるとリリーが動いた。肩が震えているし、横を向いている。もしかして笑ってるの? 私にとっては一大事よ。

「レオン様、奥様をお連れしますね」

マーサが扉を開けたのを見て、レオンは「うん」と素直に頷いた。ほっとする。もしトイレに行くのも禁じられたら、介護される可能性があったもの。さすがに恥ずかしいし、無理だわ。自分で歩けるから余計に厳しい。

トイレで一人になると、肩から力が抜けた。こんなに寛げるトイレは初めてかも。

お茶会の翌日も家族の急病で休んだヘンリック様は、さすがに仕事が溜まっているのだろう。ベルントに促されて、王宮へ向かった。お見送りも許されなかった私は、マーサに聞いたのだけれど……出かけ際、レオンにこう言ったそうよ。「アマーリアを守ってくれ」と。

それをレオンは見張ってくれと受け取った。私がベッドから降りないよう、仕事をしないよう。厳しく確認する。私がしなければならない、女主人の仕事は今はないのよ。お茶会の片付けは終わったし、絵画の収納はフランク指揮で動いていた。

レオンの世話をするのは、仕事ではなくて喜びだし。私が部屋から出られないため、気を遣ったお父様はレオンを部屋に残した。双子やエルヴィンは合間に顔を見せる。

リリーとマーサは部屋に控え、侍女長でもあるイルゼが報告や様子見に現れた。ヘンリック様に報告を義務付けられていると聞いて、驚きより恥ずかしさが強い。ずっとベッドの上です、と報告されちゃうのよね。

レオンは看病された経験があるようで、ベッドヘッドに寄りかかった私に果物を差し出す。フォークで刺し損ね、指で摘まんでいた。ぱくりと食べて「美味しいわ」と伝えれば、嬉しそうに笑う。その手で、自分も果物を口に入れた。

何度か繰り返したところで、マーサとフランクがレオンの食事を手伝う。その間にリリーが運んだ食事を私は自分で食べた。一緒に絵本を読んで、並んでのお昼寝もこなす。あら、あまり普段と変わらない気がしてきたわ。

「おとちゃま、これ……ちゃう」

「そうね、でも上手だったわよ」

「ちあう!」

そんなに勢いよく否定しないで。ヘンリック様だって頑張ったんだもの。昨夜の読み聞かせが気に入らなかったと、レオンは手を振り回して抗議する。彼なりに頑張って、絵本を読んでくれた。丁寧だったけれど、抑揚がないのよね。

普段の読み聞かせと違う。困惑した顔で私を見るが「レオン、今日は俺が読む」と言われて、我慢した。何も文句を言わずに過ごし、ヘンリック様がいなくなってから「違う」を連呼する。

ふふっ、これは優しいのかしら。それとも叱られないよう、上手に振る舞っているの? どちらでもいいわ。可愛いから許せるもの。

「奥様、猫は数日で到着するため、部屋を用意いたしました」

読み聞かせが一段落して本を閉じたところで、フランクが声をかけた。目を輝かせるレオンは……もうお昼寝をしないわね。困ったこと。