作品タイトル不明
お茶会の後3
見送りの後、夫と共に夫婦の居間に移りソファに腰掛けます。
このソファは斜めに置かれていて、普段、夫婦でとりとめのない話をするには真正面で向き合うよりも、こちらの方が良いのです。
「怒っているのかい?」
部屋に入る前、少し堅い声で夫に話があることを伝えたからでしょうか。
わたくしが話を切り出す前に、夫から話を始めてくださいました。
「えぇ。」
「さて、心当たりがあるすぎるな。」
わざと目を泳がせ焦るふりをしております。わたくしが怒っているから少しでも場を軽くしようという抵抗でございましょうか?
子どものようで可愛らしい行動です。
「スカーレットは何を言っていた?」
まだふざけます。夫が王妃様を呼び捨てにする時はふざけたり、ごまかしたりしている時です。
そして、いくら身内しかいないとしても、こうも気軽に王妃様のお名前を呼び捨てできるのは夫を含め、ごく少数です。片手で収まる人数しかおられないことでしょう。
わたくしは夫につられないよう、つとめて顔を堅くし、ふーと息を吐いて威嚇します。
「エリザベスちゃんの縁談のお話です。」
夫は一瞬考える仕草をしましたが直ぐに思い当たったようです。
さっきのか、と小さくつぶやきました。ばつの悪いかおをしております。
夫自身も覚えており、ご自身の振る舞いに非があることを自覚していらっしゃるのでしょう。
「学園に入る前の話だね。」
「エドワード殿下との婚姻について、当時のエリザベスちゃんの意見は聞きましたの?」
「いや聞かなかった。」
「なぜでございますか。」
「エリザベスが絵を書くのが好きだからね。」
聞かなかった言い訳にはなっておりません。
エリザベスちゃんが絵を描くのが好きな事は、縁談を伝えない理由にはなりません。
「しかし、選ぶ自由はエリザベスちゃんにございます。」
ある選択肢は見せなければなりません。エリザベスちゃん自身の将来の事でございますから、親の都合で隠してはならないとわたくしは思うのです。
「すまない。」
「もう、子供ではございません。あの時も、将来を考える年ごろでございました。」
夫は観念したようにわたくしを見ます。そして本音をこぼし始めました。
「あまり嫁がせたくなかったんだよ…。エドワード殿下は好きじゃ無い。当時からあまり好ましくなかった。あそこで受けたら婚姻が確定してしまうと、そう思った。」
当時、学園に入る前のエドワード殿下をわたくしはあまり存じ上げませんでした。もちろん、好ましくない部分も知らずにおりました。
ですが夫には見えていたということです。もしかしたら、同じ年頃の子を持つ親として王妃様から相談を受けていたのかもしれません。
「そこまでのお考えも含めて、エリザベスちゃんに聞くべきでしたでしょう? 話をしてあの子が理解できなかったとでもお思いですか?」
一人で抱え込み、勝手に決めてしまうくらいでしたら、一度のお茶を受けたら確定してしまう可能性を含めて、わたくしとエリザベスちゃんに話すべきでした。
それに、エリザベスちゃんはとても温かい子です。
父親が嫌だと思っている、その気持ちを軽く扱うことはないと思います。
そして相手の意見を汲んだその上で、自分の意見も言える子でございます。
夫の気持ちと、自分の気持ちの両方を大切にし、話し合うことのできる子です。