作品タイトル不明
王妃からの誘い
王都に行こうとした矢先、王宮から手紙が届きました。
立太子式の準備が進められている事と、国王陛下がクリアハート嬢にろう絡されている可能性を聞いた翌日のことでございます。
馬車に手荷物を積んで昼食を食べたら出発、というところに王宮からの使いの者が来たのです。
使いの者はわたくしたちが出立の仕度をしているのを見て、何処に行くのか、と問うてきましたので王都だと答えると、泣きそうな顔をなさったのが目にとまりました。
わたくしは、すれ違わなくてようございました、などと世間話に交えて慰めます。
気を落ち着けた使いの者は新ためて姿勢を正し、決まりの口上を述べてから、うやうやしく手紙を差し出しました。
わたくしも礼をとって口上を聞き、差し出された手紙をうやうやしく受け取ります。
受け取った手紙の差出人は王妃様でございました。
王宮からの使いの者には、礼としばらく休むように伝え、用意させた部屋に案内させます。
開いた手紙の内容はお茶会の招待状でございました。
日にちはおよそ十日後と何とも急な話です。領から王都への移動と、衣服や手土産などの仕度で精一杯の日程でございます。
領地までお茶会のお誘いを持ってくるのは、あり得ない話ではございません。ですが、少ないことなのです。
もちろん、親しい方に出されることはあるでしょう。
しかし、わたくしは王妃様と個人的な繋がりが薄いのです。
わたくしが田舎から侯爵家に嫁いだときには、すでに王太子妃という高貴な身分であらせられましたし、わたくしがお母様から侯爵夫人の名を譲り受けた時には、王の第一子を産んだ王妃として確固たる地位に御座りになっておられました。
加えて、招待状の書き方から何か重要なお話があるようでございます。
わたくしと共に使者を迎えたアルフレッドに手紙を見せますと、険しい顔で聞いてきました。
「急な日程ですね。返事はどうするんです?」
返事は使者の方に渡さなければなりませんので、今すぐに書く必要がございます。
本当は夫の今の状況を確認してからお返事したいところですが、手紙の差出人と状況からやむを得ません。
「行くしか選べませんでしょう?」
王都に行くと言った手前、断ることができるような理由も思い浮かびません。
わたくしは出席の返事をしたため、使者の方にお渡ししました。
使者の方に、わたくしたちは今から王都へ行くが、この屋敷に一泊か二泊して行くように伝え労いますと、再び泣きそうな表情を浮かべられました。
それから直ぐ、わたくしとアルフレッドは使者の方とお母様に見送られ屋敷を発ちました。
お茶会ではいったい、どんなお話が待っているのでしょうか。