軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

欲ある美女のいきつくところ2

国の危機です。正確な情報を迅速に得なければなりません。一刻も早く王都に戻ることが必要です。

「お母様、わたくし…」

「えぇ、行ってらしゃい。そのほうが良いわ。出立の準備は私が指示するから。明日の昼には発てるようにするわ。」

お母様はわたくしの意図を察し、ありがたいことに使用人への指示まで引き受けてくださいます。

わたくしはアルフレッドに顔を向け、やらなければならないことを伝えます。

「アルフレッド、細部の引き継ぎをします。わたくしの執務室にいらして。」

「え、? 今からですか? 明日行くってどこに?」

おや、アルフレッドはわたくしとお母様の話についてきていないようです。少々意外でございます。

「王都でございます。この知らせは戻らねばなりません。」

はぁ、と曖昧な返事をするアルフレッドにお母様がたずねます。

「アルフレッド、この手紙は郵便局員が配達してきたの?」

「いえ、実家の使用人が直接持ってきましたよ。流石にこの内容は郵便局からは送れないと思います。」

そうよね、とお母様は頷かれます。

アルフレッドが言う実家とは叔母様の婚家であるハルクタルム伯爵家です。アルフレッドは伯爵家の第五子でございます。

郵便局は公的機関で、国内のどこにでも手紙の配達を担う信頼性の高い機関です。

とは言いましても、それなりの家には使用人がおりますから王都内でのやりとりは直接、当人どうしで届けさせる場合が多いのです。

ですので郵便局を介するのは、主に王都の外に送りたい場合です。

これまでに夫が送ってくれた手紙は、早馬も含めここから送られております。

そして、いくら信頼性が高いと言っても多くの人が関わります。

ですから豪商や貴族は郵便局を使うときと、使用人に届けさせるときとを使い分けているのです。

「だったらアルフレッド、あなたも行って来なさい。」

お母様の提案に、わたくしもアルフレッドも驚き、顔を見合わせました。

理由がわからないでいるわたくしたちにお母様は続けます。

「アルフレッド、あなたイザベラに顔を見せてきなさい。」

あぁ、そういうことでございますか。

叔母様が書き送ってくださったこの情報が真実であるなら、この情報をご存知の叔母様には身の危険があるかもしれない。ということでございます。

ですから息子のアルフレッドは会える時に会っておくべき、とのお母様のご配慮でございます。

わたくしには考えが足りず、お母様に言われるまで思い至りませんでした。

「母にですか?」

アルフレッドは怪訝な顔をしております。

「そうよ。今じゃないとイザベラも巻き込まれるかもしれないわよ。」

「母が巻き込まれるって、そんな大げさな。」

「大げさかどうかは自分で聞いてきなさい。表向きの理由は、そうね…。」

半笑いで否定するアルフレッドに、お母様は硬い表情で答えられます。

お母様の硬さに怖気づいたのか、今度は恐る恐ると言った声色で聞きます。

「ぇ、表向きの理由がいるんですか?」

「あなたたち二人が一緒に領を空けるんだから、あったほうが良いでしょうね。後から口裏を合わせるのは結構面倒なのよ。」

口裏、と小さく呟くアルフレッドを横目に、わたくしは表向きの理由を少し考え呟きます。

「…理由はアルフレッドの縁組のご相談にいたしましょうか…。」

アルフレッドはわたくしの呟きに今度はぎょっとした表情になります。

アルフレッドの縁組はわたくしと夫が決めて良いとハルクタルム伯爵家から許可を得ているのです。

「あら、決まったの?」

「いえ、まだ領内の候補が浮上してきただけでございますが、表向きですので。」

お母様は、それにしましょう、と賛成してくださいます。

「でも俺とセシリア様の両方いなくて、領はどうするんです? まさか、伯母様が…?」

「そんなことしないわよ。でも、どうなるか分からなくても十日くらいなら問題ないでしょ。」

亡きお父様は、我が領の領官は優秀だ、と事あるごとにおっしゃっておりました。そんなお父様と長年過ごされたお母様にとって、領主がいなくても問題なく領が運営されることが当たり前なのでございます。

わたくしとしても領にとっての有事があるとして、事の起こりは王都であると思っております。ですからアルフレッドがわたくしと共に王都に行くことに異存はありません。

「十日って、俺、とんぼ返りじゃないですか!」

「そうよ。若いんだから問題ないでしょう?」

「そんな殺生な。」

わたくしは嘆くアルフレッドの肩を叩いて励まし、お母様に目礼してから部屋を出ました。

これから領官に仕事を引き継ぎ、手荷物をまとめなければなりません。

王都へ行ったところで正確な情報が掴めるかはわかりませんが、ここにいるよりはきっとましでございましょう。